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熊本地震と原発

◆住民の不安は高まっている◆

 余震が続く熊本地震。震源地に限らず、本県を含めた近県住民の不安をさらに高めているのが原発だ。一連の地震を引き起こしたとされる断層帯の南西部の先には、全国で唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)がある。北東部の先には7月下旬に再稼働予定の四国電力伊方原発3号機(愛媛県)がある。

 「想定外」が重なり大惨事となった東京電力福島第1原発(福島県)事故を国民は忘れておらず、不安の根幹にはその記憶があるだろう。熊本地震は“地震大国”が原発を抱えていることのリスクをあらためて浮き彫りにしている。

心配な震源域の拡大

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、川内原発を予防的に停止させる可能性について「安全上の理由があれば止めなければならないが、今の状況で問題があるとは判断していない」と否定した。

 川内1、2号機の新規制基準への適合検査では、今回の地震で活動した布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層帯が全域の長さ92・7キロにわたって動き、地震の規模がマグニチュード8・1になると想定。だが原発まで約90キロと遠く、影響は限定的と判断されている。

 ただ今回の地震は、震源域が拡大。川内原発に近づく南西部の断層帯の活発化が懸念されている。

 市民団体「原発いらない!宮崎連絡会」(青木幸雄代表世話人)は18日、川内原発付近にある断層が大地震を起こす可能性があることなどを指摘し、宮崎市の九州電力宮崎支社や県庁を訪れて即時運転停止を求める申し入れをした。

 こういった動きがある一方で政府は規制委の見解を追認し、「運転を停止する理由はない」(菅義偉官房長官)との姿勢を変えていない。

 国や電力会社は、長引く地震で原発への不安が強まっていることを率直に受け止めるべきだ。

運転停止の検討必要

 大分県側にも震源域が広がったことで、伊方原発への影響も心配されている。全国的にも活断層と原発への関心は高まるだろう。

 想定外の事態にも備え、念には念を入れて安全の道を探らねばならないことは、東日本大震災が残した教訓だ。

 自然の脅威を甘く見るべきではなく、安全を追求する上ではいくら慎重さがあってもいい。

 注意深く推移を監視し、状況に応じて予防的な運転停止も検討していく柔軟な姿勢が必要なのではないか。

 気象庁は活発な活動が続く熊本地震について「レアケースで先が見通せない」との見解を示している。

 原子力規制庁は1日2回、両原発に加え九州電力の玄海原発(佐賀県)、中国電力島根原発(松江市)の異常がないかどうか情報発信することにした。

 各原発周辺の活断層の状況や耐震性などを再点検し、分かりやすい形で情報公開することにも力を入れてほしい。
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