[2020_06_16_06]原発住民投票 より広く「声」を聴け(東京新聞2020年6月16日)
 
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原発住民投票 より広く「声」を聴け

 日本原子力発電東海第二原発再稼働の是非を問う県民投票条例案が、茨城県議会に提出された。3・11後多くの自治体で同様の条例案が出たものの、実現には至っていない。なぜ声は届かないのか。
 地方自治法の定める条例制定の直接請求とは、有権者の五十分の一以上の署名を添えて、制定を首長に請求できる制度である。請求が有効であれば、首長は請求者が提出した条例案に自らの意見を付けて議会に送り、その可否を問うことになっている。
 今回、添えられた署名は約八万七千筆。法定必要数の二倍近くになった。茨城県の大井川和彦知事は意見書に「県民の意見を聞くには、県民投票を含めさまざまな方法がある」と記すにとどめ、賛否の意思は示さなかった。
 3・11後、東京都や大阪市、原発の立地する静岡県や新潟県など六つの自治体で再稼働の是非を問う直接請求がなされたが、賛成の意見を付けたのは、二〇一二年当時の静岡県知事と新潟県知事二人だけ。この二県も含め、請求は全て議会で否決されてきた。
 否決が続く背景には、議会側の抵抗感があるという。議員は民意で選ばれており、あらためて「投票」をする必要はない、ということらしい。しかし、選挙の結果は四年間の「白紙委任」ではないはずだ。その時々の民意を反映させる意義は小さくないだろう。
 「原発は国策だから国が決めることだ」と否定した知事もいた。だからといって、地方議会が沈黙すべき道理はない。
 原発再稼働は、立地自治体のみならず、県民全体、いやもっと広域の安全にかかわる重大な問題だ。原発事故の影響が県境を越えて広域に及ぶことは、福島の事故が証明済みである。
 特に東海第二原発は、東日本大震災の津波による被災原発で、三十キロ圏内に、十四の市町村と百万人近い人口を擁し、各自治体は避難計画作りに苦しんでいる。日本原電は、福井県に所有する敦賀原発再稼働に向けた審査データを改ざんしていたことが発覚し、国民も不安を募らせている。
 直接請求をした市民団体の代表は県議会での意見陳述で、「問われているのは再稼働そのものではなく、いかに民意を測るのかという政策決定の過程だ」と述べた。
 投票結果に法的拘束力はない。住民の「声」を十分に把握した上で、議会として責任を持って、再稼働について適正な判断を下すべきではないか、ということだ。
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