【記事76633】社説 東海第2原発の再稼働 周辺5市の了解は難しい(毎日新聞2018年11月9日)
 
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社説 東海第2原発の再稼働 周辺5市の了解は難しい

 今月末に「原則40年」の運転期限が迫っていた日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)について、原子力規制委員会が最長20年間の運転延長を認可した。これで、東海第2原発の再稼働に向けた規制委の審査は、ほぼ終わった。
 地元同意が今後の焦点となる。事故時の住民避難など課題は山積しており、原電が周辺自治体から了解を取り付けるのは難しいだろう。
 政府は、福島第1原発事故を教訓に「原発40年廃炉の原則」を導入した。運転延長は例外的な措置とされたが、規制委は今回を含め申請された原発4基の延長をすべて認めた。
 これでは、40年原則の形骸化が進むばかりだ。老朽化によるリスクや原発依存度を低減するという導入時の意図に反するのではないか。
 東海第2原発は、避難計画の策定が義務づけられた30キロ圏内に全国最多の約96万人が居住する。自治体の計画策定は難航しており、重大事故発生時に迅速な避難ができるか大いに疑問だ。昨夏の県知事選に際し報道各社が実施した世論調査では、再稼働反対が多数を占めている。
 原電は今年3月、立地自治体の茨城県と東海村以外の周辺5市にも再稼働の「実質的な事前了解権」を認める安全協定を結んだ。
 このうち那珂市の市長は再稼働反対を表明し、水戸市議会は「再稼働は住民理解を得られていない」とする意見書を採択している。
 安全協定には、自治体間で意見が割れた場合の対応は明記されていない。しかし、地域住民の健康保護や生活環境の保全を目的とする協定の趣旨に従えば、原電が6市村すべての了解を得ることが不可欠だ。
 6市村が住民の意向を政策にどう反映していくかも問われよう。
 原電は大手電力会社などの共同出資による原発専業会社だ。福島第1原発事故後は発電量ゼロが続く経営難の中、東京電力と東北電力の支援を受けて東海第2の安全対策費1740億円を調達する方針だ。
 だが、現時点で再稼働は見通せない。株主の電力会社はいつまで原電を支え続けるのか。その原資は電気代で、国民負担と言っていい。
 再稼働にこだわるよりも、廃炉事業に軸足を置くなど、原電の経営の見直しが先決である。

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