【記事81160】東海第二再稼働方針 意思隠しに不信感 原電、近く本格工事着手(東京新聞2019年2月23日)
 
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東海第二再稼働方針 意思隠しに不信感 原電、近く本格工事着手

 日本原子力発電(原電)の村松衛社長が二十二日、県庁で大井川和彦知事と面会し東海第二原発(東海村)の再稼働方針を正式に表明した。再稼働に必要な国の審査を受けながら、原電が再稼働の意思を隠し続けてきた姿勢に、周辺自治体は不信感を強めていた。再稼働に反対する住民は、今回の表明に「理解できない」などと批判した。 (山下葉月、水谷エリナ、鈴木学、越田普之)
 表明を受け、原電は東海第二で本格的な事故対策工事に着手し二〇二一年三月までに終える予定とする。
 これまで、原電が再稼働の意思を表明する節目はあったが、明言することなく、原子力規制委員会の手続きをクリアしてきた。
 約千八百億円に上る工事のために金融機関から借り入れる資金を返済する方法として、原電は住民説明会で「再稼働するとすれば、売電で回収する枠組みになる」と、再稼働をあてにする説明をしていた。
 それでも、原電は昨年十一月、水戸など三十キロ圏の六市村長との会合で意思確認されても「申し上げる段階にない」と述べていた。
 こうした原電の「再稼働隠し」の姿勢に、六市村の一つ日立市の小川春樹市長は「工事の終わりの日だけ決めておいて、意思表明しないのはおかしい」と問題視。水戸市の高橋靖市長も「早く考えを伝えてほしい。市民にも伝わる。そして市民とともに判断する。工事が終わり既成事実を使って、再稼働を認めろというのは受け入れられない。後出しじゃんけんだ」と反発していた。
 首長側は、再稼働の手続きが着々と進んでいくにもかかわらず、住民に対し、再稼働を前提としていないという説明しかできていなかった。
 これらの自治体からは再稼働の際に事前同意が必要で、原電はこれ以上、先送りすると、自治体から理解が得られにくくなると判断したとみられる。
 再稼働に反対する住民からは批判の声があがる。水戸市のデザイナー美澤道子さん(48)は「原電の再稼働したい気持ちは、ずっと感じていたので、今更のような気もする。県民の多くが反対する中で、再稼働に踏み切ろうというのは理解できない」と怒る。
 六市村の一つの常陸太田市で脱原発の署名活動に取り組む無職の鈴木正彦さん(77)は「工事が終わってから、表明すると思っていたから意外に早いと感じた。原電が本気で再稼働したいと思っているなら、署名活動にもさらに熱を入れていきたい」と強調した。

◆一問一答 知事「県軽視で不適切」

 大井川知事は面会で「県独自の安全対策委員会の結論が出る前の表明に不快を感じざるを得ない」と述べた。面会後、報道陣との主なやりとりは次の通り。

 −「不快感」の真意は。
 「国の審査を経たといっても、県は、住民説明会の意見も踏まえながら安全性の評価を独自の対策委員会でやっているので、その結果を待つべきではないか。県に対して若干、軽視とも思えるような不適切な対応なのではないか」

 −工事終了は二〇二一年三月の予定。そこを意識して避難計画や住民説明をすることは。
 「工事の終了見込みと、計画の策定とはリンクしない。計画の策定を拙速に進める意思は全くない。実効性ある計画を作れるかどうか徹底的に検証し、できるまで時間を掛けるのがわれわれのスタンス」

 −県民意見の吸い上げは。
 「県独自の検証も終わっていないし、避難計画を含めて全体像を示すこともできていない。段階を経た後に、最終的に住民の意思の確認という話が出てくると思っている」

◆原電・村松社長の一問一答 「不快」重く受け止める

 面会を終えた村松社長と、報道陣とのやりとりは次の通り。

 −再稼働の意思表明がこの日になった理由は。
 「規制委の許認可内容に基づいて詳細な安全性向上対策を詰め、一定のめどがついたことが一点。併せて昨年三月に東海村や隣接市と結んだ新たな安全協定、加えて今月に三十キロ圏の残りの八自治体との間で協定を結ぶことができ、一定の状況が整い、事業者トップの気持ちを伝えにきた」

 −再稼働はいつごろか。
 「時期をとても言える段階ではない。工事については、構内で感電事故が起きたこともあり、しっかりと作業安全と労働災害の防止に取り組んでいく」

 −知事の「不快感」に、受け止めは。
 「重く受け止める。県の安全対策委員会の内容についてすべてフォローし、必要な時に説明の機会をもらっている。この後もしっかりと対応していきたい」

 −三十キロ圏の住民説明会をすると面談で述べたが、そのスケジュールは。
 「まだそこまでは考えていない。県の説明会の内容を精査し、できる限り、私どもの住民説明会で反映して、事業者として分かりやすい丁寧な説明に心掛け、進めていきたい」

◆「安全、安心を第一に」 事前同意必要な6市村長コメント

 再稼働の際の事前同意が必要な6市村の首長のコメントは次の通り。

<東海村の山田修村長> 6市村で会合を開く必要があると感じている。原電の安全対策工事が再稼働につながるものではない。特に避難計画は、住民に理解してもらえるものができるのかは、先行きが不透明。

<水戸市の高橋靖市長> 驚きはないが、実効性のある避難計画の策定や市民の理解が進まない限り、再稼働を認めないのが市の方針だ。原電には行政、住民とのやりとりをしっかりやってほしい。

<那珂市の先崎光市長> 市民の安全、安心を優先に考え、協定に沿って協議していく。再稼働の議論は、市民、市議会の意見などを十分考慮し、慎重に判断していく。

<日立市の小川春樹市長> これまで6市村とのやりとりに対して明確な対応をいただいていないものがあると考えており、事業者には一層、丁寧な対応をお願いしたい。

<常陸太田市の大久保太一市長> 6市村で連携しながら対応していかなければならないと考えている。市民の安全、安心を第一に慎重に対応したい。

<ひたちなか市の大谷明市長> 改めて6市村で詳細な説明を受けるべきだと認識している。実効性のある避難計画を含め、市民の安全が確保されない限り、再稼働できないものと認識している。

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