[2018_04_24_05]伊藤忠 トルコ原発離脱へ 事業費倍増、利益確保困難に(毎日新聞2018年4月24日)
 
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伊藤忠 トルコ原発離脱へ 事業費倍増、利益確保困難に

 三菱重工業、伊藤忠商事などがトルコで進める新型原発建設計画から、伊藤忠が離脱する。2015年から3年間、事業化に向けた調査が行われたが、現時点で事業化のめどが立っていないことから参画を見送る見通し。原発は安全対策費の上昇で建設費が膨らんでおり、日本が官民挙げて進めてきた原発輸出に逆風となっている。
 伊藤忠が離脱するのは、トルコ北部の黒海沿岸シノップの原発建設計画。三菱重工とフラマトム(旧社名アレバ)の共同出資会社「アトメア」が開発した新型軽水炉「アトメア1」(110万キロワット)4基を建設し、23年の稼働を目指している。
 日本、トルコ両政府が13年、アトメアによる受注で事実上合意した。三菱重工が主体となり、18年3月末まで事業化に向けた調査を実施。その過程で、13年の計画当初、4基で2・1兆円程度と見積もられていた総事業費が2倍以上に膨らむことが判明した。三菱重工は調査期間を夏まで延長している。
 事業化した場合、参画企業が建設費を負担し、発電による利益で回収する計画だが、建設費の上昇で当初想定した利益が得られない可能性が高まっている。伊藤忠関係者は「もともと3月末まで調査に協力することになっており、その役割を終えた」と説明した。
 政府関係者によると、政府は事業費の増加を受けてトルコ政府に資金面での負担を求めているが、交渉は平行線をたどっている。伊藤忠が事業への参画を見送れば、事業費を負担する企業が減ることになり、事業の実現性はより厳しくなりそうだ。アトメア1の建設は、トルコの他、ベトナムやヨルダンでも構想されたが頓挫しており、開発構想自体が見直される可能性も出てきた。
 一方、日本の原発輸出では、日立製作所も英国中部で建設計画を進めている。3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が融資し、大型の軽水炉2基(計270万キロワット)を建設する計画。原発事故などのリスクがあるため、政府がメガバンクの融資の全額を保証する「オールジャパン体制」を敷いているが、英政府や英銀行の出資・融資が日本側の要望する水準に達せず、協議が続いている。【竹地広憲、藤渕志保】

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