[2018_12_16_01]日本の国策「原発の海外輸出」が頓挫 一体何が起こっている?(THE PAGE2018年12月16日)
 
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日本の国策「原発の海外輸出」が頓挫 一体何が起こっている?


三菱重工、採算取れず計画断念 日立も頓挫の可能性

 日本の国策として官民一体となって推進してきた原発の海外輸出が頓挫しかかっています。日本の原発技術は世界一と喧伝されていますが、何が起こっているのでしょうか。
 三菱重工が、政府と一体となって進めてきたトルコの原子力発電所の建設計画を断念する方針を固めました。最大の理由はコストがかかり過ぎて事業の採算が取れないことです。
 トルコでの原発建設計画は、安倍首相とトルコのエルドアン首相(現大統領)の個人的な関係をきっかけに浮上したもので、政権の目玉政策として位置付けられました。三菱重工を中心とした企業連合が、黒海沿岸のシノプという場所に4基の原発(総出力約450万キロワット)を建設するというのが計画の主な内容です。
 当初は2017年に着工する予定でしたが、実際に事業化に向けた調査を行ったところ、建設費が想定の2倍近くになる可能性が高いという現実が明らかとなりました。トルコ側はこの数字に難色を示し、調整を行ってきましたが、合意が得られなかった模様です。
 一方、日立製作所が英国で進めてきた原発建設計画も暗礁に乗り上げています。日立は英国中西部のアングルシー島で2基の原発を建設しますが、この案件もトルコと同様、単純に原発を建設するのではなく、運営まで引き受け、建設費は電力を販売した代金から賄うというスキームになっています。英国側が提示している電力の買い取り価格では、採算が合わない可能性が高まっており、このままでは事業が頓挫する可能性も出てきています。

採算度外視で攻める新興国 日本は太刀打ちできるか

 福島第1原発の事故以降、安全対策から原発のコストが上昇しており、メーカーは苦しい対応を余儀なくされています。事業の採算性が低いことから、原発の生みの親である米GE本体(ゼネラル・エレクトリック)や欧州の巨大メーカーである独シーメンスなど、海外の主要メーカーはすでに原発事業からほぼ撤退しています。
 現在、原発の輸出に力を入れている中国、ロシア、韓国といった国々は採算を度外視し、破格の値段を提示して、多くの受注を獲得しています。日本メーカーだけがこうした国々と直接競争するという状況になっており、価格面ではどうしても不利になります。
 もし日本が国策として原発輸出を推進し、こうした新興国との競争に勝つためには、損をしても案件を取るという覚悟が必要となりますが、そうした対応をするのは難しいでしょう。安倍政権が掲げてきた、原発輸出によって経済を再生させるというシナリオは大きな転換点を迎えています。
(The Capital Tribune Japan)

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