[2018_12_17_01]英原発計画、日立凍結へ 政府輸出戦略 全て暗礁(東京新聞2018年12月17日)
 
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英原発計画、日立凍結へ 政府輸出戦略 全て暗礁

 日立製作所が、英国での原発新設計画を凍結する方向で調整していることが十六日、分かった。三兆円規模に膨らんだ事業への出資企業を確保するのが困難で、巨額の損失が出た場合に単独では補えないためだ。三菱重工業もトルコでの原発新設を断念する方向で、安倍政権が成長戦略の目玉に掲げた原発輸出の案件は全て暗礁に乗り上げることになる。
 日立は事業継続の可能性を残すが、現状では事実上、撤退する公算が大きい。日英両政府にこうした方針を非公式に伝えたもようだ。安倍晋三首相は来年一月に英国訪問を検討しており、メイ首相と原発についても話し合う可能性がある。
 日立は英原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」の出資比率を100%から50%未満に引き下げ、子会社から外したい考えだ。日本国内の電力会社などに出資を呼び掛けているが、事業費が一段と増える懸念から難航している。
 採算確保の鍵を握る電力買い取り価格も決着していない。英政府が電気料金が大幅に上昇しないよう価格を低く抑えたい意向であるのに対し、日立は投資の回収を急ぐため高い価格水準を求めている。ただ欧州連合(EU)離脱交渉に伴う英政局の混乱で、英側との協議は「膠着(こうちゃく)状態」(日立幹部)に陥っている。
 六月には、英政府が直接投資の検討を表明したことを受け、最終の投資判断に向け本格協議に入った。一方で「経済合理性を最優先する」(東原敏昭社長)と慎重な姿勢を崩していなかった。七月には、原発計画から撤退した場合の損失が最大で二千七百億円になると試算した。
 日立と英政府は英中西部アングルシー島で原発二基の建設を計画し、二〇二〇年代前半の運転開始を目指していた。安全対策の強化などで、事業費が当初の二兆円から一・五倍に拡大していた。日本政府の原発輸出政策は、英国やトルコのほか、ベトナムやリトアニアでも撤回や凍結といった計画の見直しが相次いでおり、実現のめどが立たなくなっている。

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