[2023_02_14_10]トルコ大地震 活断層250キロ90秒で破壊 連動型 - 静岡新聞(静岡新聞2023年2月14日)
 
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トルコ大地震 活断層250キロ90秒で破壊 連動型 - 静岡新聞

 6日にトルコ南部を襲った大地震は、長さ250キロの長大な活断層が90秒かけて次々と破壊する連動型だったことが分かってきた。活断層の近くでは、建物を倒壊させるような特徴的な地震波も発生していたとみられる。日本にもこうした長大な活断層が存在しており、専門家は「トルコより建物の耐震性が高いとしても油断は禁物だ」と警鐘を鳴らしている。

 史上最大

 現地時間の6日未明にマグニチュード(M)7・8、9時間後にM7・5が続いた。地震はまずトルコ北東部から地中海へと走る全長数百キロの東アナトリア断層で、次にこの断層から枝分かれするように延びる別の活断層で起きたようだ。米地質調査所(USGS)によると、周辺では余震が活発に起きている。
 産業技術総合研究所の近藤久雄主任研究員(古地震学)は余震の分析からM7・8の震源断層を長さ250キロと推計した。東アナトリア断層には複数の区間があって個別にM7前後を起こすと考えられていたが、今回は少なくとも4区間が一度に動いた。「この断層ではおそらく歴史上最大の地震だ」(近藤さん)
 似たような長大断層は日本にもある。例えば長野県から山梨県に延びる糸魚川―静岡構造線断層帯(全長約158キロ)や、近畿から四国、九州に及ぶ中央構造線断層帯(全長約444キロ)だ。
 東北大の遠田晋次教授(地震地質学)によると、今回の地震はこうした断層帯が一度に大きく動くイメージだ。
 政府の地震調査委員会は、二つの断層帯を4〜10区間に分けて将来の地震確率などを求めている。複数の区間が連動する可能性も否定できず、確率の計算は難しいがM8程度が起きるとしている。日本にとっても今回はひとごとではない。

 阪神大震災の2倍

 トルコでは6400棟以上が地震で崩壊したとされる。東京大の三宅弘恵准教授(強震動地震学)によると、今回の地震では建物を一撃で破壊するような継続時間の短い地震波が観測された。「パルス波」と呼ばれ、1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災)でも観測されている。
 トルコ政府機関によれば揺れの強さを示す加速度は最大で約1788ガル、同じく速度は最大で毎秒約213センチだった。阪神大震災は同じく約818ガルで毎秒約97センチ。「揺れは阪神大震災の2倍くらい」(三宅さん)。断層沿い150キロの範囲が強烈な揺れに襲われた。
 愛媛大の森伸一郎特定教授(地震工学)によると、トルコには揺れに弱いれんがの壁が多く、建物を柱だけで支える形になりやすい。柱がかなり頑丈でないと、各階がフロアごとぺしゃんこになるパンケーキ崩壊を起こしてしまう。人が逃げる時間もなく、隠れる隙間もほとんど残らない。「日本の建物は耐震性が高く、仮につぶれても生存空間は残るだろうが、家具の転倒や落下で命を失うこともあるので備えてほしい」(森さん)
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