[2023_05_05_15]専門家「群発地震、年単位で続く可能性も」 石川・能登震度6強(毎日新聞2023年5月5日)
 
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専門家「群発地震、年単位で続く可能性も」 石川・能登震度6強

 2023/5/5 21:22
 地震活動が活発化していた石川県能登地方で5日、最大震度6強の地震が発生した。今回の地震をはじめとする一連の群発地震は、いずれも地下の水が誘発して起きたとみられる。政府の地震調査委員会も4月、地下水などの移動が関わっているとの評価をまとめている。平田直(なおし)委員長は「これまでの地震活動のあったエリアで起きている」と話す。
 複数の専門家が提示するのが、地下深くから上昇した水などの流体が、地震を引き起こす断層面に入り込み、断層がすべりやすくなっている可能性だ。
 太平洋プレートの沈み込みで水が地下深くに取り込まれ、そこからしみ出した水が上昇。地盤を押して膨張させたり、断層のすき間に入り込んだりして、繰り返し地震を起こしているとみられる。
 東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)によると、水が地下の岩石の割れ目に入り込むと、岩盤が壊れやすくなり、破壊に伴って地震が起きやすくなるという。「実際に、能登半島は地殻変動で膨張しており、水が上がってきていることを示している可能性がある」と指摘する。
 ただ、これまでの群発地震では大きいものでもM5クラスで、最大のものは、2022年6月に最大震度6弱を観測したM5・4だった。今回の地震はM6・5で、エネルギーは約40〜50倍にもなる。
 東京工業大の中島淳一教授(地震学)は「M6を超える大きな地震が起きたことは驚いている」と話す。
 なぜこれほど大きかったのか。中島さんは「地下でこれまでよりも大きな断層のすき間に水が入り込み、断層の破壊につながった可能性がある」と説明する。
 中島さんによると、最近、能登半島の地殻変動は緩やかになっているとみられていた。「地上で観測できるほどの地殻変動はみられず、大きな断層すべりの動きは低下していた。ただ、観測できない小さな断層すべりが地下で起きていた可能性があり、大きな断層の破壊につながったと想定される」という。
 一方で、平田さんは「これまで最大だった22年6月の地震も、規模がだんだん大きくなったわけではなく突然起きた。こうした地震は長い間だらだら続き、ときどき大きなものが起きる。今回、特異な地震が起きたとは思っていない」と話す。
 能登半島の北岸には、1729年の能登・佐渡地震(M6・6〜7)や07年の能登半島地震(M6・9)などを引き起こした海底活断層がある。平田さんは「これまでの活動は三次元的にみて海底活断層とは別の活動だとみている。一連の群発地震の一部だと思っており、現時点で活断層が活動したとは考えていない」と説明した。
 中島さんは、「群発地震は短い期間で終わるものが多いが、1965年から長野県で続いた『松代地震』など、5年以上続いた例はある。能登地方では今後も、M5〜6程度の地震が年単位で続く可能性もある。長期的に地震活動を見ていくことが必要だ」と話した。【垂水友里香、寺町六花、渡辺諒】
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