[2021_11_19_01]志賀原発2号機 敷地内の断層 規制委が現地調査開始 (NHK2021年11月19日)
 
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志賀原発2号機 敷地内の断層 規制委が現地調査開始

 石川県にある志賀原子力発電所2号機の敷地内にある断層を調べるため、原子力規制委員会は18日、現地調査を始めました。
 北陸電力は「活断層ではない」と主張していますが、原子炉建屋の真下を通る断層が活断層だと評価された場合、志賀原発は再稼働できなくなるため、今後の焦点となっています。
 志賀原発には18日朝、原子力規制委員会の石渡明委員など14人が入り調査が始まりました。
 北陸電力は志賀原発2号機の再稼働を目指して審査を申請し、7年前から規制委員会による審査が行われていて、2号機の原子炉建屋の真下を通る断層を含む、敷地内の10の断層が将来動く可能性のある「活断層」かどうかが焦点です。
 現地での調査は、審査開始以降初めてで、委員らは調査用に掘られた溝に入って地層の断面を観察したほか、壁面を直接触るなどして、それぞれの断層付近の地層の状態を確認しました。
 志賀原発の敷地内にある断層をめぐって、規制委員会の専門家会合は5年前、一部の断層は「将来動く可能性が否定できない」などと指摘しています。
 これに対して、北陸電力は、その後の調査で得られた断層に含まれる鉱物の成分などの新たなデータを示したうえで「活断層ではない」と主張しています。
 原発の新しい規制基準では、将来動く可能性のある断層の上に原子炉建屋など、重要な施設を建設することを認めていないため、活断層だと評価された場合、志賀原発2号機は再稼働できず、廃炉になる可能性があります。
 調査は19日も行われ、敷地の近くを通る活断層の長さなどを現地で確認する予定です。

石渡委員「今後の審査の場で調査結果踏まえ議論」

 原子力規制委員会の石渡明委員は現地調査を行った背景について「専門家会合は以前、『断層の活動性を否定できない』と評価し、新しい証拠が出ないかぎり尊重する立場だったが、北陸電力が検討に足る新しいデータを出してきたため、現地での調査を実施した」と説明しました。
 そのうえで「『百聞は一見にしかず』で、断層を実際に見たほか、ボーリング調査の結果を見て、審査で説明を聞くのとは印象が違う部分があった。納得できた部分、そうでない部分があったので、今後の審査会合できちんと議論して、はっきり決着をつける必要がある」と述べ、今後の審査の場で調査結果を踏まえて議論し、「活断層」かどうかを評価する考えを示しました。

調査のポイントは

 石川県志賀町にある志賀原発には原子炉が2つあり、このうち北陸電力は2号機の再稼働を目指して原子力規制委員会に審査を申請しています。
 焦点となっているのは、志賀原発の敷地内を通る10の断層が将来、動く可能性がある「活断層」かどうかで、一部の断層は5年前、規制委員会の専門家会合で議論されています。
 このときは、▽1号機の真下を通る断層「S-1」と▽1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管の真下を通る断層について評価し、▼「Sー1」断層については、「将来動く可能性は否定できない」と指摘、▼冷却用配管の真下を通る断層は「将来、地盤を変形させる可能性がある」としました。
 これに対し、北陸電力はいずれの断層も「将来動く可能性はない」と主張。
 その根拠として「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法による評価を提示しました。
 「活断層」は、断層のうち、過去に繰り返し活動し、将来も動く可能性があるものを指します。
 原発の新しい規制基準では、今から12万年前から13万年前の「後期更新世」の時代よりもあとに動いたとみられる断層を「活断層」と定義しています。
 断層が動いた時代を調べるためにおもに用いられるのが、「上載地層法」と呼ばれる手法で長い年月をかけて断層に積み重なった地層を調べてずれ動いた年代を特定・推定します。
 一方で、志賀原発の場合、堆積した地層の変化がわかる資料が少ないことなどから「上載地層法」だけで年代を把握するのが難しいとして「鉱物脈法」という手法も採用したとしています。
 「鉱物脈法」は、地層に含まれる鉱物が地下の熱などの影響で変質した時期を調べることで断層の年代を把握する手法で、北陸電力はボーリング調査で採取した試料などを分析。
 600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層による変形が見られないことなどから、規制基準にある12万年前から13万年前の時代よりも古い断層で、活動性を否定できると主張しています。
 規制委員会は、今回の現地調査で、▼断層周辺の地層の変化や▼断層に含まれる鉱物の分析結果などを観察し、北陸電力の主張が妥当かどうか確認することにしています。
 このほか、敷地の外を通る活断層も調査する計画です。
 志賀原発の東およそ1キロを、南北に走る福浦断層が将来、動く可能性がある「活断層」だとされています。
 北陸電力は福浦断層などが引き起こす最も大きな地震の揺れの強さを1000ガルと想定し、志賀原発2号機の配管や設備の耐震性を評価しています。
 規制委員会は福浦断層などを調査して、北陸電力が示す地震の揺れの想定が妥当かどうか判断することにしています。
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