[2021_11_20_06]福浦断層「データ不足」 志賀原発現地調査で規制委、北電は追加説明へ準備(北日本新聞2021年11月20日)
 
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福浦断層「データ不足」 志賀原発現地調査で規制委、北電は追加説明へ準備

 原子力規制委員会は19日、北陸電力志賀原発2号機の新規制基準適合性審査(安全審査)の現地調査を18日に続き実施した。全2日間の日程を終え、規制委の石渡明委員は敷地近くの活断層「福浦断層」のデータ不足を指摘。北電による追加調査や新たな資料提出の必要性を示した。かつて「マイナスからの出発」と表現した志賀の安全審査の進ちょくについては「ゼロになったぐらい」と述べ、前進したとの認識を示した。(室田雅人)
 福浦断層は志賀原発の東側約1キロに位置し、北電が活動性を認めた周辺断層のうち原発に最も近い。この日は、延長3・2キロの北側と南側で行ったボーリング調査の試料、地層を見えるように掘った試掘溝などを観察した。終了後の取材で石渡氏は「南側がよく分からない。追加調査されると理解している」と語った。さらに、前日の調査で2号機原子炉建屋直下を通る「S−4断層」にも疑問が生じたと言及。「これまではっきりしたイメージがなかったが、直接見て分かったこともある」と述べた。
 「マイナスからの出発」は、2020年1月の規制委臨時会議での石渡氏の発言。規制委の有識者調査団が16年に「(敷地内断層の)活動性を否定できない」とする評価書をまとめたことを念頭に置いたとみられる。今回の「ゼロになった」は北電が提出した新たな資料や現地調査によって、調査団の評価書以外に判断材料が加わったことを意味する。石渡氏は「我々にとっては一つの大きな前進」と述べ、今後の審査会合の議論に反映させるとした。
 北電の石黒伸彦副社長原子力本部長は「補助データを追加するなど、さらに詳しい説明ができるよう早急に対応する」と述べた。
 現地調査は志賀原発2号機再稼働の前提となる安全審査の一環。規制委は今後の審査会合で追加調査について議論する。

■活動性判断決着に時間か

 敷地内断層問題の決着を目指す北電にとって、今回の現地調査は「最終確認をしていただくステージ」(松田光司社長)だった。だが、原子力規制委の石渡明委員は「納得いかない部分もあった」と述べ、現地を見て一部に想定との違いがあったことを示唆した。北電は追加資料や調査の準備を急ぐが、結論にはまだ時間がかかる可能性がある。
 現地調査は「敷地内断層に活動性はない」と主張する北電から昨年7月に提出された新資料を踏まえ、規制委が主張の妥当性をどう判断するかが焦点だった。石渡氏が「納得いかない部分」として挙げたのはS−4断層。重要施設の直下にある断層の活動性の有無を慎重に見極める姿勢を、あらためて示したと言える。
 志賀と同じく断層問題を抱えていた東北電力東通1号機(青森県)の場合、1回目の現地調査から「敷地内断層に活動性がない」と結論が出るまでに1年5カ月かかった。
 断層問題をクリアしても耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」や想定される津波の高さ、設備など審査項目は山積している。北電が志賀2号機の審査を申請してから7年3カ月。「マイナス」で始まった審査は「ゼロ」にこぎ着けたものの、再稼働への道のりが険しい事実は変わらない。

■活断層1カ所でも駄目/規制委石渡氏一問一答

 −福浦断層を見た感想は。
 「南側はデータが不足し評価が難しい面もある。北電がしっかり調査すると言っているので、審査会合で今後議論したい」

 −2日間の現地調査を通じて思ったことは。
 「目で直接見て手で触れるなど貴重な機会。(調査は)前進したと思う」

 −北電の説明に納得した部分と、そうでない部分があったということだが、どちらが大きかったか。
 「(敷地内)断層に一カ所でも活動性の可能性がある場所があっては駄目。そういう意味では、そうした割合は重要でない」

 −敷地内断層の活動性の可能性から審査会合を「マイナスからの出発」と表現していた。今はどうか。
 「マイナスがゼロになったぐらいのところですかね」

 −今後の審査会合のスケジュールは。
 「資料が出てきた段階でできるだけ早く開きたい。遅滞なく進めていく」
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