[2014_07_09_02]福島第一原発 「凍土遮水壁」 厳しい環境下で大工事 汚染水対策、報道陣に公開(東奥日報2014年7月9日)
 
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 東京電力は8日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で6月上旬から始めた「凍土遮水壁」の工事現場を報道陣に公開した。深刻化する汚染水問題打開の切り札とされ、320億円もの国費を投じる大工事だ。ただし、「氷の壁」が1〜4号機をぐるりと囲むのは来年3月以降で、それまでは地下水が原子炉建屋に流れ込む。また、凍土壁が期待される効果を十分発揮するかどうか不安要素も残る。巨大な汚染水タンクが林立する敷地内の光景は、原発事故からの再生が途方もない道のりであることを実感させた。
 2重の靴下に、3重の手袋。厳重に防護服を着込んだ後、配られたのは鼻と口部分だけを覆う「半面マスク」だった。これまでのメディア公開は顔面をすっぽりと覆う全面マスクの着用だったが、事故から3年余りがたち、放射線量が「かなり落ち着いた」(東電)として、今回初めて着用時の負担が軽い「半面」となった。
 公開されたのは4号機そばの工事現場。凍結管を入れるための深さ約30メートルの穴が、数台のボーリング機械によって次々に掘られていた。7日の時点で90本の掘削が終わっているが、一連の工事では1〜4号機の周囲約1・5キロに約1550本もの凍結管を埋め込む必要がある。
 「落ち着いた」と言っても、現場での線量は最大で毎時36マイクロシーベルト。3号機近くでは車中ながら同598マイクロシーベルトを計測した。このため作業員は金属製の重いベストを着ての作業を強いられる。熱中症を防ぐため、作業時間も午後5時〜同11時に限られており、厳しい環境下であることを実感した。
 一方、凍土壁をめぐっては遮水が計画通りに進むかが懸念されている。同原発では高濃度汚染水の抜き取りのため、同様の技術で地下トンネル内の一部を凍結止水する対策を行ったが、うまく凍らないことが判明。これを受け、7日の原子力規制委員会の会合では、現行の凍土壁計画をも心配する声が出た。
 1〜4号機の建屋には、山側から1日約400トンの地下水が流れ込んでいるとされる。建屋地下にたまっている汚染水は約7万2干トン。凍土壁の成否は汚染水問題解決の重要なかぎを握る。
 同原発の小野明所長は報道陣に、敷地内で行った凍土壁の実証試験で効果を確認していることを強調し、「(地下トンネルの凍結とは)条件が違う。凍土壁はあまり心配する必要がないと思っている」と語った。
 8日は、間もなく使用が始まる敷地内の新事務棟も公開された。現在約10キロ離れた福島第2原発に詰める第1原発の所員約1千人が今月下旬から順次移り、現地での廃炉作業を加速させる予定だ。
  (藤本耕一郎)
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