前回の質問者 生越忠様にお答えします 東京電力社長 那須翔 【Page 71】(月刊経営塾12月号(1988)1988年12月1日)
 
※ 記事の原寸大表示 テキスト部へ移動
 
 

※以下は本文をテキスト化したものである

前号の質問者 生越忠様にお答えします
東京電力社長 那須翔
 地震時の安全性についてご心配をしておられる由、承りましたが、私どもは、日本における原子力発電所は、地震時における適切な安全性の評価と耐震設計をしているので安心できると考えおります。

前略 ご丁重なご質問、拝読させていただきました。
 先生は、「地震国日本に原発は似合わない」という考え方を基本として、地震時の安全性について御心配をしておられる由、承りましたが、私どもは、日本における原子力発電所は、地震時における適切な安全性の評価と耐震設計をしているので安心できると考えております。
 以下に、先生のご質問に対して、「基礎岩盤」、「地震」、「活断層」、「耐震役計」の四つに分けてお答えいたします。

一 原子炉建屋の基礎岩盤について

 原子炉建屋の基礎岩盤は、施設の自重や地震時に加わる力に対して、十分な支持力を有し、すべり等の地盤破壊や不同沈下についても、十分な安全性を有していることが必要です。
 先生は、原子炉建屋が岬と岬に囲まれた湾奥部の脆弱な岩盤に設置されている場合について危惧しておられますが、原子炉建屋は必ずしも岬と岬に囲まれた湾奥部に設置されているわけではありませんし、また一概に岬部に比べて湾奥部の岩盤が脆弱であるとはいえません。
 また、基礎岩盤に作用する原子炉建屋の荷重は、地震時においても、一平方メートル当たり最大一六〇トン程度で超高層ビルと同程度の荷重であり、アーチダムの一平方メートル当たり五〇〇〜九〇〇トンに比べると、はるかに小さなものです。したがいまして、原子炉建屋の基礎岩盤は、規模の大きなダムで要求されるように特別堅硬である必要はありません。
 いずれにしましても、原子炉建屋の基礎岩盤についでは、設置場所が岬であるか湾に面した位置であるかにかかわらす、多数のボーリングや試掘坑で直接岩盤を確認し、原子炉建屋の設置位置で各種の岩石・岩盤試験を実施するなど入念な調査を行い、原子炉建屋を支持する上で十分な安定性を有していることを確認しておりますので、ご安心頂きたいと思います。
 つぎに、原子炉建屋の基礎岩盤は均質性の高いことが必要である、とのご意見ですが、一般に岩盤は多かれ少なかれ不均質となっています。したがって、ボーリングや試掘坑調査、岩石・岩盤拭験によって基礎岩盤の不均質の程度を把握し、必要に応じ岩盤を区分した上で、安定解析や耐震設計を行っておりますので、不均質性は特に支障となるものではありません。
 また、各岩種ごとの設計値として岩石試験値の最小値を用いるべきである、とのご意見につきましては、局部的に弱いところがあってもまわりの強いところが受け持ってくれること、たとえば、おみこしを担ぐ場合、力の弱い人がいてもまわりの力の強い人がカバーしてくれることと同様、最小値で全体を代表させる必要はなく、全体のバランスを考えて平均値で評価し、ばらつきについては標準偏差で考慮することが合理的です。