私の公開質問状ーその七 拝啓 東京電力社長殿 前和光大学教授・「開発と公害」編集代表 生越忠 【Page 72】(月刊経営塾11月号(1988)1988年11月1日)
 
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※以下は本文をテキスト化したものである

が、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」が定められてからは、同指針にしたがって、直下地震はM=6.5に限定して考慮されることになりました。
 しかし、M=6.5以上の直下地震は、全国のいたるところで起こっているという事実を考えるならば、直下地震はM=6.5に限定して考慮するというのは、不都合ではないでしょうか。
 ちなみに、地震断層は、M=6.5以上、震源探さ二〇キロメートル以浅の地震、とくに直下地震が起こった際にしばしば出現するものですが、考慮すべき直下地震をM=6.5に限定すると、地震断層の出現による基礎岩盤の破壊による原子炉などの事故の発生の蓋然性は、結局、無視されてしまうことになりませんか。

 六、活断層の活動期間をなぜ限定するのですか。

 現段階では、活断層の定義に統一されたものはまだありませんが、従来は、「第四紀、つまり約二〇〇万年前から現在までの間に動いたと見なされる断層」という定義が主流になっていたように思われます。
 しかし、前述の審査指針では、活断層の第四紀における年平均変位速度(S。単位はミリメートル)によって、活断層の活動度をA級(S≧1)、B級(1>S≧0.1)およびC級(0.1>S)に分けたとき、A級のものについては一万年前以降に、B−C級のものについては五万年前以降に活動した証拠がなければ、原子炉の設置には支障はないことにされています。
 このように、審査対象となる活断層の活動期間を非常に狭く限定することは、安全性を最優先させるという立場からは到底理解しがたいのですが、この点についての貴下のご見解をおたずねいたすとともに、活断層をどう定義すべきかについても、ご教示を賜わりたいと存じます。

 七、日本の原発に地震による事故がまだ起こっていないことを、どう認識しておられますか。

 最後に、日本の原発に地震による事故がまだ起こっていないことについて、貴下がどう認識されているのかをおたずねいたします。
 この点について、私は、日本の原発の歴史がまだ浅いことと、昭和二十三年の福井地震を最後に、日本では一回の地震で千人を超える死者が出たような大被害地震がまったく起こっておらず、日本は全体として地震活動の静穏期に入っていることとによるものと考えております。
 近い将来、日本が地震活動の旺盛期に突入し、終戦を挟んだ数年間のように、大被害地震が続発し、しかも、それらのうちのあるものが原発を直撃するといった事態もありえないことではないと思われます。
 貴下におかれては、こうした点にくれぐれもご留意のうえ、地震国日本の原発は、はたしてどこまで安全なのかを、慎重に検討されますことを、心から念願いたす次第であります。