[2024_01_10_04]能登半島地震でわかった−原発避難計画の破綻 強い地震・津波が発生した時点で原子力防災計画は機能しない 上岡直見(環境経済研究所代表)(たんぽぽ2024年1月10日)
 
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能登半島地震でわかった−原発避難計画の破綻 強い地震・津波が発生した時点で原子力防災計画は機能しない 上岡直見(環境経済研究所代表)

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◎ 2024年1月1日に「令和6年能登半島地震」が発生し、北陸電力志賀原子力発電所(停止中)が立地する石川県志賀町で震度7が記録された。
 これは福島第一原発事故後に「原子力災害対策指針」が制定されてから初めて立地自治体での震度7と大津波警報である。それまで川内や伊方でそれに近い地震が発生したが、ぎりぎりのところでかわしている。

◎ 志賀町は原発周辺の5km圏と、その他全域が30km圏に入る。
 そこで「志賀町原子力災害避難計画」を改めて検討したが、他の地域に比べても著しくレベルの低い内容に呆れた。公開されているのは2017年11月版で、それ以降は改訂されていないようである。8割方は国(規制委員会)の資料をコピペしただけで具体的な内容は何もない。
 「指針」では、原発の所在市町村(原発敷地ではない)において「震度6弱以上の地震」「所在市町村沿岸を含む津波予報区において大津波警報が発表」に該当すれば、放射性物質の放出の有無にかかわらず「警戒事態」に該当し避難準備を始めなければならない。ただし今回は原子炉の燃料が抜かれている状態のため適用されない。

◎ 志賀町の計画に示されている町民に対するアナウンスでは「○○地区、○○地区のみなさんは、今後の事故の状況により屋内避難または避難の可能性があることから、無用な外出は控え、自宅に留まり、今後の町からのお知らせや、テレビ、ラジオなどの情報に十分注意してください。今後、屋内退避又は避難が必要と判断される場合には、追ってご連絡しますので、自宅にて落ち着いて待機してください」という文面が用意されている。

◎ しかし今回の地震では、NHKのアナウンサーが「テレビを見ていないで逃げてください」「家に戻らないでください」などと絶叫して一部では危機感を伝える適切なアナウンスと称賛された。
 危険要因が津波だけならそれでよいかもしれないが、原発の緊急時対応が加わったらどうなるのだろうか。
 一時的に高台などに避難したとして、現在でも停電が続き携帯・ネットが通じない。道路損傷で広報車も動けない、防災無線も停電、という状態になったら、放射線防護に関する情報提供をどうするのだろうか。

◎ その後の事態の進展によって避難する状況になった場合に、志賀町は能登町と白山市に避難するとされているが、今回の地震では能登半島全体に大きな被害を受けており他町の避難者受け入れどころではない。
 それ以前に映像でみられるように、道路が損傷したりブロック塀が倒壊したりでそもそも自宅から何十kmも離れた場所に移動する方法がない。

◎ 屋内退避について国の「指針」では、屋外にいるよりも放射線の遮へいや汚染大気の吸入を防げるという試算に基づいている。
 しかし映像でみられるように、家屋が倒壊しないまでも扉や窓が外れたり瓦が落ちたりして屋外とほとんど変わらない状態である。
 志賀町の避難計画には「ヨウ素剤の予防服用」が一言あるだけでどのように配布・服用するのかも不明だが、いずれにしてもヨウ素剤配布など不可能だろう。
 たまたま志賀町の例を取り上げたが、強い地震・津波が発生した時点で原子力防災計画は機能しないことが露呈した。
KEY_WORD:能登2024-原子力災害対策指針-見直しへ_:NOTOHANTO-2024_:FUKU1_:SIKA_: