[2024_01_01_15]石川・能登の震度7 「地下水」で断層滑りやすく発生か(日経新聞2024年1月1日)
 
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石川・能登の震度7 「地下水」で断層滑りやすく発生か

 18:30
 石川県の能登半島地震は2020年末から群発地震が起きていた。政府の地震調査委員会はこれまで地下深くの水(流体)が関与しているとの見解を示し、専門家は今回も同様の可能性を指摘する。震源の浅さに加え、地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.6(速報値)と阪神大震災(同7.3)より大きく、激しい揺れを招いた。発生メカニズムは不明な点も多く、今後も余震に警戒が必要だ。
 気象庁によると、1日午後9時点で、震度1以上の揺れは59回発生した。震度7が1回、震度5強が3回など激しい地震が続いている。今回の地震の活動領域は約130キロメートルで、過去3年ほどの間に能登地方で観測された地震より広がっているという。
 能登地方では20年以降、人的被害を伴う震度5強以上の地震が5回起きた。23年5月5日には震度5強と6強の揺れが相次ぎ、死者1人を含む死傷者計50人と住家約200棟の全半壊という被害があった。20年3月と22年6月にも同規模の地震が発生した。
 能登地方の地震活動は特に20年12月から活発化し、震度1以上の地震が500回超確認された。政府の地震調査委員会は23年5月に「活動は当分続くと考えられる」との評価をまとめ、国は防災対策の強化を呼びかけていた。
 能登地方の地震メカニズムについて、調査委は地表面の隆起や震源の移動が確認されていることから、水のような地下の流体の移動が関係している可能性を指摘した。
 東京工業大の中島淳一教授(地震学)は「地下の水が上昇して断層に入り、滑りやすくなったことで地震が発生した可能性が高い」と指摘する。地震波の分析では、深さ20〜30キロのところに水がたまっているといい、10〜15キロ付近まで上昇すると地震を起こす原因になるとみられる。
 地下になぜ流体があるのかなど不明な点も少なくない。中島教授も「M7を超える群発地震は世界でも観測事例がほぼないのではないか」と話す。今後も比較的大きな地震が連続する可能性があるとみて警戒を呼びかける。
 東京大の加藤愛太郎教授(地震学)は今回の地震について、23年5月5日の地震同様に「逆断層型の地震」としたうえで「今回は断層が東西方向や深さ方向で大きく滑り、海底面付近のかなり浅いところまで破壊されたことで津波が発生した」と分析する。
 「地震活動は下がってきていたが、依然として高いレベルにある。今回、流体が断層をすべりやすくして、より大きな破壊を起こしたかもしれず、今後も引き続き活動に注意が必要だ」と話している。
 今回の地震では東日本大震災以来となる大津波警報が発令され、北海道から九州にかけて広い範囲に津波が到達した。地震に伴う海底の沈降や隆起によって周辺の海水が上下に変動し、津波が発生したとみられる。
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