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もんじゅについてお答えします_1.「もんじゅ」の意義・役割-詳細-



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1.1 なぜ高速増殖炉の研究開発が必要か?-詳細-

 エネルギー資源に乏しい我が国においては、長期的なエネルギー安定供給の確保は国の存立基盤をなす重要な課題です。また、エネルギーの安定供給と地球温暖化対策の両立も重要な課題です。
 高速増殖炉は、発電過程において二酸化炭素を排出しないという原子力発電の特性を持っているうえに、発電しながら消費した燃料以上の燃料を生産することができます。これまで通りの軽水炉の利用では、ウランが潜在的に持つエネルギーの0.5%しか使えませんが、プルサーマル利用によって0.75%を利用できるようになります。さらに、高速増殖炉は、その能力を最大限活かすことができ、ウランが潜在的に持つエネルギーの60%程度を取出すことができます。これによりウラン資源の利用効率を飛躍的に高め、我が国のエネルギー安定供給に大きく貢献できます。また、高速増殖炉は、高レベル放射性廃棄物中に長期に残留する放射性の核種を効率的に燃焼できるため、核燃料サイクルの中にその核種を閉じ込め、高レベル放射性廃棄物の発生量等を低減し環境負荷を現行よりさらに低減させる可能性を有しています。エネルギー安定供給と環境保全の両立のためには高速増殖炉サイクルの開発が必要であり、国と民間はオールジャパン体制でその開発を進めています。

関連情報リンク
・原子力政策大綱(平成17年10月14日閣議決定)
・日本のエネルギー2009(経済産業省資源エネルギー庁)

図1.1 エネルギー資源と地球環境問題の解決に向けた高速増殖炉サイクル技術の開発



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1.2 高速増殖炉はどのようなステップで実用化していくのか?-詳細-

 高速増殖炉の開発は、実験炉(「常陽」(熱出力14万kW)※1)、原型炉(「もんじゅ」(電気出力28万kW))、実証炉(電気出力50万kW〜75万kW)※2、実用炉(電気出力150万kW)※3と段階的に開発を進めます(※1:「常陽」は発電炉ではない。 ※2、※3:検討上の値)。
 実証炉は、実用炉の経済性を予測し得る炉として、実用炉とほぼ同じ仕様ですが、出力規模は数分の一となります。原型炉は、実証炉を建設する前に技術的な課題を摘出・解決し、発電プラントとして実証することを主目的としています。経済性の見通しを確認する必要がないため、機器・設備の技術の基盤は実証炉と共通ですが、機器・設備の課題摘出と解決のために形状や構造に違いがあり、実証炉のミニチュアとはなりません。実験炉とは、高速増殖炉を構成する様々な技術の基礎を確認するため、原子炉そのものの本質的な部分、つまり、冷却材としてナトリウムを取扱うこと、ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の炉心から熱を取出すことに重点を置いた設計となっています。
 実験炉「常陽」については、これまで臨界を確認した上で増殖比の確認や規模は小さいが実際の原子炉でのナトリウム取扱技術の経験を積んできました。 その次の段階として発電機能を有する我が国唯一の発電用高速増殖炉である「もんじゅ」では、その運転・保守経験を通じた研究開発成果を実証炉以降の高速増殖炉の設計・建設・運転・保守に反映していきます。
 また、このような「もんじゅ」の運転と並行して、建設コストの大幅な削減やさらなる安全性の向上が期待される革新的な技術等の研究開発や、そのような技術に基づく設計研究を実施しています。
 これらの成果を踏まえ、2015年頃に実証炉・実用炉の概念設計と実用化に至るまでの研究開発計画を提示する計画です。

関連情報リンク
・高速増殖炉サイクル技術の今後10年程度の間における研究開発に関する基本方針(平成18年12月26日原子力委員会決定)
・上記参考資料

図1.2 高速増殖炉の実現手順とそのゴール



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1.3 高速増殖炉の燃料が倍になるのに数十年かかるので、高速増殖炉の基数を増やすには長い年月が係るのではないか? -詳細-

 軽水炉から得られるプルトニウムなど、外部からプルトニウムの供給が一切ない状況において、1基の高速増殖炉自らが増殖した燃料だけで2基目の燃料を賄おうとするのであれば、2基目の高速増殖炉の炉心分の燃料を作り出すのに数十年かかりますが、実際にはその年数で高速増殖炉が増えるわけではありません。
 我が国では既に軽水炉による原子力発電が行われています。ここで、高速増殖炉は、運転期間を終了した軽水炉を順次置き換えることによって導入されるため、軽水炉と高速増殖炉が共存する期間が半世紀以上に亘って存在します。高速増殖炉導入の初期においては、軽水炉の使用済燃料を再処理して回収されるプルトニウムを十分利用できます。さらに高速増殖炉の導入が進み、高速増殖炉が原子力発電の主流となって軽水炉の使用済燃料から供給されるプルトニウムが少なくなってきた時点では、複数の高速増殖炉によって増殖されたプルトニウムを加えることによって新設する高速増殖炉に必要なプルトニウムを確保することができます。
 日本の軽水炉サイクルを想定した場合、このようなプルトニウムの需給バランスを考慮すると、58GWe(2030年以降に想定される原子力発電設備容量)の軽水炉を約60年間で高速増殖炉に置き換えることができます。21世紀に高速増殖炉を主流とする原子力発電を実現することで、ウラン資源を海外から輸入する必要がなくなるため、ウラン資源を節約できます。

図1.3 高速増殖炉サイクル導入の試算例



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1.4 「もんじゅ」の役割とは何か?-詳細-

 高速増殖炉は、段階的に開発が進められます。実験炉で技術基盤を確認し、原型炉で発電技術を確立して、実証炉で経済性を見通すことで、実用化します。原型炉段階の「もんじゅ」には、発電プラントとしての信頼性実証とナトリウム取扱技術の確立を通じた下記の研究開発を進め、設計の確からしさを確認するとともに、経済的な運転、保守・補修技術を確立し、2015年頃から実証炉を具体化するために並行して実施する革新的な技術の研究開発成果に対して、技術的な信頼性を示していく役割があります。

 @  「もんじゅ」の設計・建設で培われたナトリウム冷却高速増殖炉の炉心・燃料設計、温構造設計、耐震設計、伝熱流動設計等の手法について、「もんじゅ」で得られるデータを用いて設計の確からしさを確認し、実証炉の設計手法を確立します(発電プラントとしての信頼性実証)。
 A  大型の高温機器、特にナトリウム系と水・蒸気系が存在する「もんじゅ」の機器・設備の運転、保守・補修経験を積むことで、その性能を確認し、実証炉に向けた経済的な運転、保守・補修技術を確立します(運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立)。

 また、所期の目的を達成した以降「もんじゅ」を中心に経済性、環境負荷低減性の更なる向上の観点から、炉心燃料に関する研究開発等を効果的に行う計画を検討しています。この計画には、日仏米で役割を分担して実施する国際的なプロジェクトも含まれています。国際的な研究開発の場としての役割があります。
 さらに、これらの取組みにおいて、地域の企業や大学等と連携し、立地地域の産業や学術の活性化を図る役割も担っています。

図1.4 「もんじゅ」の役割



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1.5 性能試験の具体的計画

「もんじゅ」の性能試験計画については、ナトリウム漏えい事故以降長期にわたって中断 していることも踏まえて、次の3点を考慮して計画を見直しました。

(1)プラントの安全性を一つ一つ確認しながら慎重に系統・設備に係る機能や性能を確認するため、プラント状態に応じ段階的に試験を実施することにより、試験の結果から摘出される課題について、対応可能な計画としました。
(2)性能試験の段階的な実施を通して、運転員及び保守員等、高速増殖炉開発に携わる技術者の技術向上及び将来への技術継承を図ります。
(3)高速増殖炉開発のための炉心データ*を取得することができる計画とします。また、ナトリウム冷却型高速増殖炉のプラント全体システムの運転特性データ等を取得します。
*:アメリシウム-241の含有率が、従来よりも高い燃料で構成された炉心での臨界性や温度係数等の基本的な炉物理データ

以上を踏まえ、今後実施する性能試験は3段階に分けて行います。

・第1段階では、原子炉を臨界状態にして、炉心の安全特性を確認するため、炉物理データの取得等を目的とした「炉心確認試験」を行います。

・第2段階では、水・蒸気系及びタービン・発電機を含むプラント全系統の機能と性能の確認を目的とし、核加熱による系統昇温を行い、40%電気出力で「40%出力プラント確認試験」を行います。

・第3段階では、本格運転に向けた出力上昇及び100%出力運転時におけるプラント全系統の性能確認を目的とし、40%、75%及び100%電気出力で「出力上昇試験」を行います。
 なお、「40%出力プラント確認試験」及び「出力上昇試験」の前に、所定の炉心反応度が得られるよう燃料交換を行い、また、設備点検を行います。
  各試験段階及び設備点検の所要期間は、以下のように計画しています。

炉心確認試験  40%出力プラント確認試験  出力上昇試験  設備点検燃料交換等 合    計
  約2ヶ月        約6ヶ月            約9ヶ月       約18ヶ月         約35ヶ月

関連情報リンク
・「高速増殖原型炉もんじゅ性能試験(炉心確認試験)計画書」の提出について(平成21年2月23日)

図1.5 「もんじゅ」性能試験の全体工程(2010.12.16時点)



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1.6 「もんじゅ」と実用炉(実証炉)の設計は同じか? 「もんじゅ」の成果は役に立つのか? -詳細-

 ナトリウム冷却型高速増殖炉には、一次系の機器を原子炉容器に納めるタンク型と、一次系の機器を原子炉容器と分けて配管で繋ぐループ型がありますが、経済性だけでなく機器の保守・補修性や耐震安全性など総合的な評価により、我が国ではループ型が優れているとの評価がされています。  
 実証炉の炉型は「もんじゅ」と同じループ型のナトリウム冷却高速増殖炉を採用する予定であり、ナトリウム冷却高速増殖炉である「もんじゅ」の技術を基本としつつ、経済性向上等の観点から個別に新たな革新的な技術を適用して実証炉が実現されることになります。  
 例えば、「もんじゅ」の設計・建設で培われたナトリウム冷却高速増殖炉の炉心・燃料設計、高温構造設計、耐震設計、伝熱流動設計等の手法について、「もんじゅ」で得られるデータを用いて設計の確からしさを確認し、実証炉の設計手法を確立します。また、大型の高温機器、特にナトリウム系と水・蒸気系が存在する「もんじゅ」の機器・設備の運転、保守・補修経験を積むことで、その性能を確認し、実証炉に向けた経済的な運転、保守・補修技術を確立します。これにより、同じ技術を基本とする革新的な技術の技術的信頼性を明示することができます。これにより、「もんじゅ」の研究開発成果が実証炉の実現に役立ち、高速増殖炉の実用化が進みます。

関連情報リンク
・「もんじゅ」における研究開発計画の評価について(平成21年12月8日)

図1.6(1) 「もんじゅ」での技術実証と実証炉への反映


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