[2022_03_18_10]脱線 大惨事は回避 東北新幹線 橋脚・電柱の耐震化課題 全面再開 来月以降か 脱線は16両(東奥日報2022年3月18日)
 
 最大震度6強を観測した16日夜の地震で、東北新幹線は脱線しながらも、負傷者は出ず、大惨事は回避した。過去の同種の事故を教訓とした安全対策が奏功し、JR東日本の関係者は胸をなで下ろす。ただ、橋脚や電柱といった設備の被害が目立ち、耐震化が追いつかない現状も露呈した。3月中の全面復旧は難しい見通しで、観光や経済への影響が懸念される。
 緑色のH5系、赤色のE6系が連結された17両編成が、高架橋の上で左石ばらばらにレールからずれた姿をさらした。宮城県白石市で脱線した「やまびこ223号」。仙台市の乗客(26)によると、最初の緊急地震速報が鳴った時には減速しており、停車後に2回目の強い揺れが来たという。
 インターネットなどで車内外の映像を見た日本大の綱島均教授(鉄道工学)は「横揺れと上下の揺れに見舞われ、一部の車両は跳ね上がるように脱線したのではないか」と話し、早期地震検知システムによる非常ブレーキが作動し被害軽減につながったと推察する。
 このシステムは、地震の初期微動(P波)が、強い揺れを伴う主要動(S波)よりも速く伝わる性質を利用。沿線などに設置した地震計でP波を捉え、震源の位置や規模を推定し、変電所を通じて必要な区間を停電させ列車を止める。現在は気象庁の緊急地震速報や海底地震計のデータも反映している。
 そのほか、脱線時の対策として、JR東は車両にL字形の金具を装着。レールに引っかかって大きく外れないため、側壁との衝突などを防ぐことができる。2004年の新潟県中越地震で上越新幹線が脱線した教訓からJR東が開発し、同社の全新幹線に導入された。
 またJR東は、レールが傾かないよう固定する「レール転倒防止装置」を今回の現場を含む約千`の区間に取り付け、列車の横転防止策も取っていた。国土交通省の担当者は「整備したシステムが機能した」と評価するが、今回の地震では、電柱の損傷が相次ぐなど設備の被害が目立つ。
 JR東は阪神大震災や東日本大震災を踏まえて補強を進めるが、昨年2月に福島、宮城両県で震度6強を観測した地震では、活断層データなどを基に優先対策したエリアの外で設備の被害が発生した。
 同社は優先対象エリアを見直し、電柱耐震化を従来の約2倍のペースで進める方針を示したが、完了までには今後7年かかる。続発する大地震に、対応が追い付いていないのが現状だ。
 東北新幹線の被害の全容を把達し、必要な補修をして全面復旧するには時間がかかりそうだ。那須塩原ー盛岡間は21日まで運休が決まり、3月中の全面再開は難しいとみられる。04年の中越地震では余震で車両の撤去などが難航し、再開まで約2カ月かかった。
 JR東は今年10月の鉄道開業150年を祝い、旅行商品の販売やイベントを予定。新型コロナウイルスまん延防止等重点措置の解除が決まり、ゴールデンウイークを控えて東北観光の需要に期待も高まっていた。運休が長引けば盛り上がりに水を差し、地域経済への影響も懸念される。
 市川東太郎副社長は「安全対策が機能したか検証する必要もあると慎重な姿勢を示す一方で「気持ちとしては、いち早く再開させたい」との思いも口にした。

 全面再開 来月以降か 脱線は16両

 JR東日本は17日、宮城県と福島県で震度6強を観測した地震で、東京発仙台行き東北新幹線やまびこ223号が全17両中16両で脱線していたと明らかにした。現場は宮城県白石市で、白石蔵王駅から福島駅方向に約2`の地点。乗客75人と乗員3人の計78人にけがはなかった。同社は東北新幹線の那須塩原−盛岡間の運休を少なくとも21日まで続け、全線での運行再開は4月以降の可能性があるとしている。
 国土交通省によると、地震が発生して営業運行中の新幹線が脱線したのは、2004年10月の新潟県中越地震での上越新幹線以来、2例目。同省は鉄道事故に認定し、現地で調査した運輸安全委員会の鉄道事故調査官は「1回目の地震でブレーキがかかり、2回目の大きな揺れで脱線したのではないか」との見方を記者団に示した。
 JR東によると、223号は16日夜、走行中に地震を検知して自動停止し、その後脱線が確認された。地震発生から約4時間後の17日午前3時半ごろ、乗客が列車から線路に降りて徒歩で移動し非常口から高架橋を出てバスで白石蔵王や仙台に向かった。被害状況を調べたところ脱線のほか、耐震化したものも含め17カ所の電柱が傾斜したり圧壊したりした。22月以降の運行は復旧状況を見ながら判断するが、福島−仙台間は被害が大きく復旧に時間がかかる見通しで3月中の再開は厳しいとみている。
 那須塩原−福島、仙台−盛岡間の被害は比較的小さいとみられ、詳しい状況を把握し、早期再開を目指す。東京−那須塩原と盛岡−新青森は10日以降も本数を減らし折り返し運転する。

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