【記事93800】伊方原発3号機 運転再び認めず 「地震、火山の想定不十分」 広島高裁、仮処分決定(毎日新聞2020年1月18日)
 
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伊方原発3号機 運転再び認めず 「地震、火山の想定不十分」 広島高裁、仮処分決定

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、五十キロ圏内に住む山口県東部の三つの島の住民三人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(森一岳裁判長)は十七日、運転を認めない決定をした。「四国電の地震や火山リスクに対する評価や調査は不十分だ」とし、安全性に問題がないとした原子力規制委員会の判断は誤りがあると指摘した。 
 運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。
 伊方3号機の運転を禁じる司法判断は、二〇一七年の広島高裁仮処分決定以来二回目。伊方3号機は現在、定期検査のため停止中で、今月十五日にはプルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の取り出しを完了した。四月二十七日に営業運転に入る計画だったが判決の見通しは立っておらず、運転再開は当面できない状態となった。原発再稼働を進める国の方針にも影響しそうだ。
 主な争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)や、約百三十キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクの評価が妥当かどうかだった。
 森裁判長は、原発の危険性検証には「福島原発事故のような事故を絶対に起こさないという理念にのっとった解釈が必要なことは否定できない」と言及。四国電は伊方原発がある佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価は必要ないとしたが、「敷地二キロ以内にある中央構造線が横ずれ断層の可能性は否定できない」とし、調査は不十分だとした。
 火山リスクについても「阿蘇カルデラが破局的噴火に至らない程度の噴火も考慮するべきだ」とし、その場合でも噴出量は四国電想定の三〜五倍に上り、降下火砕物などの想定が過小と指摘。その上で、原子炉設置変更許可申請を問題ないとした規制委の判断は誤りで不合理だと結論付けた。
 四国電は決定に対し、異議申し立てをする方針を明らかにした。今後、広島高裁の別の裁判長による異議審で決定の是非が判断される見通し。
 昨年三月の山口地裁岩国支部決定は、地震動や火山リスクの評価に不合理な点はないとし、申し立てを却下。住民側が即時抗告した。岩国支部の訴訟は二月二十八日に次回口頭弁論予定だが、判決期日は未定となっている。一七年十二月の広島高裁決定は、阿蘇カルデラで破局的噴火が起きた場合のリスクを指摘し、運転差し止めを命じたが、一八年九月に同高裁の異議審で取り消された。

◆「不服申し立てる」四国電コメント

 四国電力は十七日、広島高裁が伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分決定を出したことを受け「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない。速やかに不服申し立ての手続きをする」とのコメントを出した。
(東京新聞)
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