【記事41930】地震連鎖、南西にも 日奈久、布田川断層の延長上(西日本新聞2016年4月17日)
 
参照元
地震連鎖、南西にも 日奈久、布田川断層の延長上


 熊本県にある日奈久(ひなぐ)、布田川(ふたがわ)両断層帯が14日と16日に相次いで大きく破壊され、震度6強を超える地震を引き起こしたのを発端に、もともとエネルギーをためている周辺断層への「連鎖」が懸念されている。両断層帯でひずみが残っている区間や、既に地震が多発する大分県から海峡を経て四国方面の断層などに影響は出ないのか。

 14日に震度7の揺れを記録した日奈久断層帯について気象庁と政府の地震調査委員会は17日、「南にも活動が広がっている」との見解を示した。熊本県八代市などで微小地震が発生しているためだ。

 政府はもともと、同断層帯を三つに区分。14日に地震をもたらした北部の「高野−白旗」区間より南、八代市などを通る「日奈久」「八代海」両区間の地震発生確率は全国の主要断層で上位だ。東京大地震研究所の古村孝志教授(地震学)は「日奈久断層帯の南側では、地震発生に注意が必要だ」と警戒を呼び掛ける。

 日奈久断層帯の南部で大規模地震があった場合、心配されるのが九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)への影響。調査委メンバーの一人は「影響は分からない。だが、原発を慎重に運転すべきだとの考えは、一つの見識として否定しない」と言葉を選んだ。

 古村教授は、16日未明の地震で動かなかった布田川断層帯の西側区間や、日奈久断層帯の南東方面にある緑川(みどりかわ)断層帯での「連鎖」の可能性も指摘する。

 懸念はさらに広い地域に及ぶ。大分県では17日も由布市を中心に地震が続いた。同市には別府湾内から同県西部まで東西に別府−万年山(はねやま)断層帯が走っており、16日の布田川断層帯による地震の影響を受けているとされる。別府から長崎県の島原までの中九州には、地盤間の溝である「地溝帯」が幅20〜30キロにわたって分布。そこに多くの断層や火山がある。

 この地溝帯の東には、愛媛県から四国電力伊方原発(愛媛県)付近を経て奈良県まで続く中央構造線断層帯も控える。1596年の慶長地震では、関西や中央構造線、別府湾での地震が連動していたとの見方もある。このため、九州大地震火山観測研究センターの松島健准教授(地震学)らは、愛媛県などに新たな観測点を設けることを検討中。松島准教授は「プレート(岩板)内の地震の連鎖がいつ止まるのか、見極める必要がある」と話す。

 さらに、プレート間の南海トラフ地震を誘発する可能性はないのか。京都大地震予知研究センター宮崎観測所の寺石真弘助教(測地学)は、日向灘の海上地震計のデータを注視する。「今のところ大きな変化はみられないが、引き続き警戒していく」としている。

KEY_WORD:KEICHOU_:SENDAI_:KUMAMOTO_: