[2021_08_20_03]社説:原発審査中断 原電の倫理が問われる(京都新聞2021年8月20日)
 
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社説:原発審査中断 原電の倫理が問われる

 原発の安全をないがしろにする行為を許してはならない。
 日本原子力発電が、敦賀原発2号機(福井県)の敷地内の地質調査に関する記述を無断で書き換えていた問題で、原子力規制委員会は、再稼働の前提となる審査の中断を決めた。
 書き換えられたのは、原子炉建屋直下の断層が活断層であるかどうかを見極め、再稼働の可否を決める上で最も重要な資料だった。
 活断層だった場合、原発の新規制基準では廃炉となる。審査の根幹に関わる問題であり、規制委の判断は当然と言える。
 問題の発覚は昨年2月で、原電が示した資料から元の記述が消えているのを規制委側が見つけた。
 従来の資料では、地質調査で採取された試料の状態が、活断層である可能性を示す「未固結」と記されていたのに、正反対の「固結」に変わっていた。書き換えは計25カ所あり、うち18カ所は建屋直下の断層の活動性を判断するのに重要な地点の記述だった。
 規制委は「元のデータの書き換えは絶対にやってはならない。倫理上の問題だ」と批判している。
 原電側は「肉眼による観察結果を顕微鏡によるものに変更した」などと意図的な改ざんを否定するが、審査結果を再稼働へ有利に導くための行為だと受け取られても仕方がない。
 敦賀2号機直下の断層を巡っては、規制委が2015年、「敷地内の活断層と連続し、将来の活動を否定できない」とする有識者調査団の評価を了承した。
 原電は今後、調査結果の妥当性について説明を続けるとしているが、自前の調査だけで信頼性を確保するのは極めて困難な状況だ。
 規制委も現場に立ち会って地質調査などをやり直さない限り、資料の公正さは担保されないのではないか。安全を科学的に立証できなければ、再稼働への理解は得られない。
 原電は原発専業会社だが、東京電力福島第1原発事故以降、保有する原発を1基も動かせていない。今年3月には、審査済みの東海第2原発(茨城県東海村)が住民の避難計画に不備があるとして、水戸地裁が運転を認めない判断を下した。
 過去にも冷却用の海水温度などで記録の改ざんが判明している。
 規制委は今回の問題で、データの扱いだけでなく、業務管理にも問題があったと指摘している。自浄作用が機能していない原電の企業体質が厳しく問われている。
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