[2023_11_21_06]東海第2 拡散予測を茨城県が公表へ 首長会議 初の現地視察後、了承(東京新聞2023年11月21日)
 
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東海第2 拡散予測を茨城県が公表へ 首長会議 初の現地視察後、了承

 07時55分
 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)からおおむね30キロ圏内の15市町村でつくる「東海第2原発安全対策首長会議」は20日、東海第2を視察し、再稼働に向けた事故対策工事の状況を確認した。視察後に現地で会合を開き、県が事故を想定して原電に依頼した放射性物質の拡散シミュレーション(予測)の結果公表を了承することを決めた。県は近く公表を予定している。(長崎高大)
 首長会議の現地視察は初めて。ただ、防潮堤工事でコンクリートの未充てん(じゅうてん)や鉄筋の変形が確認された施工不備の現場は、「重機などがあって現場が錯綜(さくそう)している」(原電)との理由で今回は視察できなかった。首長たちはバス車内から現場周辺を見るにとどまり、原電側から原因や経緯の説明を受けた。
 拡散予測は、半径30キロ以内の自治体に策定義務がある広域避難計画の実効性を検証するため、県が原電に要請。昨年12月に原電から結果の提出を受けたが、県は「実際に住民に説明することになる15市町村の了承がないと公表できない」として、結果を明らかにしていなかった。
 首長会議は8月の前回会合時点では、実際に考えにくいほどの大事故や気象条件が盛り込まれているなどとして、「住民の不安をあおることになる」と、公表に否定的だった。今回、県が補足の説明や文言を大幅に修正をしたものを示したことを受け、首長側が公表を了承した。
 現地での会合後、首長会議座長の高橋靖・水戸市長が取材に応じ、公表に異議を唱える市町村はなかったと説明した。高橋市長は「妥当性としてはまだ不安定なところもあるが、これ以上公表しないのは問題。住民の反応を見ながら説明責任を果たしていきたい」と述べた。
 県防災・危機管理部の山崎剛部長によると、予測結果は事故や気象の条件などが異なる計22通りあり、全て公表する方針。修正したのは説明部分だけで、結果の図は原電から提出された当初のままという。
 今回の視察では、淡水貯槽や緊急海水ピット、主排気筒、常設代替高圧電源など、東海第2再稼働に向けた事故対策工事現場を回り、原電の担当者の説明を聞いた。
 施工不備の公表が発覚から4カ月後になった点は首長会議側も問題視しており、高橋市長は会合の冒頭「このようなことが続けば住民は不安に陥り、行政との信頼関係が崩れる。安全協定に盛り込んでいなくても、何か発生した際は報告する姿勢を持ってもらいたい」と求めた。
 原電の坂佐井豊・東海事業本部長は取材に「不安を与えたことは深くおわびする」と謝罪。公表時期について「全貌が分かったタイミングがいいと思っていたが、もう少し適切なタイミングがなかったかとの声も聞いている。どういう形がいいのか社内で検討したい」とした。
 首長会議側は原発構内での火災が昨年度3件、本年度は既に4件と頻発していることにも触れ、高橋市長は「改めて厳重な注意を申し上げたい。原因究明と再発防止、管理体制の強化を求める」と話した。
 安全対策首長会議は東海第2の安全対策や広域避難体制を議論する場として設けられ、新型コロナウイルスの影響で8月に4年半ぶりに開かれた。
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