[2023_06_09_01]<東海第二原発 再考再稼働>(54)村議会は意思を示して 「東海第二再稼働に反対する会」代表・塚原千枝子さん(73)(東京新聞2023年6月9日)
 
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<東海第二原発 再考再稼働>(54)村議会は意思を示して 「東海第二再稼働に反対する会」代表・塚原千枝子さん(73)

 私が代表を務める市民団体「東海第二発電所の再稼働に反対する会」は二〇二二年二月、東海村議会に対し、日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働に反対する意見書を国や県に提出するよう求める請願を出した。別の団体が出した同様の請願一件や、再稼働に賛成する意見書の提出を求める二件の請願とともに、村議会で審議が続いている。
 反対する会は、さまざまな団体や個人が請願のために結集したもの。請願を出したのは、再稼働賛成派の請願が出ている中で、私たちの主張を村議会にきちっと示し、議員にしっかり審議してもらい、議会の意思を形で示してほしいと考えたからだ。
 請願では、東京電力福島第一原発事故の例を挙げて「原発事故がいったん起これば影響は甚大かつ長期にわたり広範囲に被害をもたらすことを教えている」と書いた。また、政府が「実効性のある広域避難計画を住民の合意のもとに策定することなしに再稼働はない」と国会答弁していることを指摘した上で「被ばくしない安全な避難と元の生活に戻れることを保障した実効性ある広域避難計画を策定することはきわめて困難」とも訴えた。
 広域避難とは、今の生活や地域の結び付きを捨てるということだ。それを住民が受け入れられるのか。
 東海第二は一九七八年十一月に営業運転を始めた古い原発だ。東日本大震災の時には一時は危機的状況になっていたことを、村上達也村長(当時)が後から知った事実として明かしている。私は当然、廃炉になるものと思ったが、四十年間の運転期限を迎える直前の二〇一八年十一月、原子力規制委員会は二十年間の運転期間延長を認可した。
 一方、六十年超の運転延長を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が今年五月三十一日に成立した。福島原発事故後に定めた運転期間の上限(原則四十年間、最長六十年間)を見直すものだ。こんなに古い原発を使い続けるとはどういう判断なのか。住民の人権を無視する政治の劣化を実感する。
 五月には、東海村や水戸市など六市村でつくる原子力所在地域首長懇談会が、再稼働に関する原電との協議事項の素案を同社に提示した。だが双方とも内容を公表していない。住民寄りでなく秘密主義だ。素案でもオープンにして意見を募り、より良くしていくべきではないか。
 原子力の怖さを最初に実感したのは、一九九九年に東海村で起きたジェー・シー・オー(JCO)臨界事故だ。
 発生は午前十時半ごろだが、事故があったと伝えられたのは昼ごろ。私は勤めていた保育所で、園児たちと水遊びをした後、外のテラスで昼食を取っていた。役場からの情報も少ない中、子どもを迎えに来た保護者で原子力関連の仕事をしている方が「大変な事故かもしれないから、子どもたちを外に出さない方が良い」とささやいたのを覚えている。その直後、三日間の屋内退避となった。
 村ではこれまで、たびたび原子力関係の事故があった。そのたびに上空にヘリコプターが飛来する。ヘリの音を聞くと不安を感じる。(聞き手・竹島勇)

<つかはら・ちえこ> 1950年、日立市生まれ。県立保育専門学校卒。73年、東海村立保育所の保育士に。75年から村内で暮らす。2011年3月、保育所長を最後に定年退職。「東海第二発電所の再稼働に反対する会」代表。女性団体「新日本婦人の会」東海支部長も務める。
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