[2023_10_11_01]関西電力、行き詰まる使用済み核燃料 中間貯蔵施設は「進展ゼロ」、原発敷地内に乾式貯蔵施設の実現性は(東京新聞2023年10月11日)
 
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関西電力、行き詰まる使用済み核燃料 中間貯蔵施設は「進展ゼロ」、原発敷地内に乾式貯蔵施設の実現性は

 06時00分
 福井県にある関西電力の原発の使用済み核燃料を巡り、関電は10日、搬出前の保管先として、原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討していることを明らかにした。一方で、過去に約束した中間貯蔵施設の整備は、候補地確保を掲げたものの全く進展がなかった。県外搬出の準備として、原発敷地内に新たな貯蔵施設整備を検討するという策にも具体性はなく、かえって県内保管が長期化する恐れも否定できない。議論の前提となる核燃料サイクル政策も実現の見通しが立たず、関電の窮状は深まっている。(渡辺聖子、小野沢健太)

 ◆「説明できないものを信用しろというのか」

 使用済み核燃料の搬出先となる中間貯蔵施設の県外候補地を2023年末までに確定させる―。関電が福井県と交わした約束の期限が残り2カ月に迫っても、関電は具体的な内容を示さなかった。この日の県議会全員協議会で、自民党県議は「説明できないものをわれわれに信用しろというのか」と憤った。
 関電はフランスでの実証研究用に高浜原発から少量を搬出する計画をもって「約束は果たした」と、県にボールを投げたとする立場。8月には、中国電力と共同で山口県上関町に中間貯蔵施設の建設計画が持ち上がったが、この日は候補地に含めているのかどうかすら説明しなかった。

 ◆乾式貯蔵「最終処分地になるのでは」

 また、中間貯蔵施設へ搬出するまでの保管先として、原発内に空冷式の乾式貯蔵施設の整備検討を始めたと明らかにした。
 「乾式貯蔵施設を発電所の中に設けるとなると、(使用済み核燃料の)最終処分地になるのではないかという疑念が生まれる」。別の県議からは、県内保管の長期化につながらないか懸念の声が上がった。
 関電は新たな貯蔵施設について、搬出時は貯蔵プールから取り出して金属製の容器に入れる必要があるため、空冷式の設備に移しておくことは効率的と主張。ただ、設置場所や保管規模、時期は未定だ。
 新たな貯蔵施設が完成しても、現在の保管容量の上限を超えて貯蔵することはないと説明。原発の稼働を続ければ使用済み核燃料は増えるが、増強した保管容量は使わないという。しかし、全国的な電力需給の逼迫などが生じた場合は「例外」として増強分の活用に含みを残し、その場しのぎの対応に終始している。

 ◆望みは六ケ所の再処理工場だが…

 県外搬出の手段として、もう一つ挙げたのが日本原燃(青森県六ケ所村)の再処理工場の稼働だ。
 国の核燃料サイクル政策の中核施設が動けば、使用済み核燃料を工場へ運び出すことができる。しかし、原子力規制委員会の審査は原燃の説明不足で難航。「24年度上期のできるだけ早期」とする完成目標は、達成が不可能に近い。
 関電は原燃を支援するため、約40人の職員を原燃へ出向や派遣。審査対応のかじ取りを担う中心組織は、6人のうち5人を関電出身者で占め、規制委関係者からは「もはや原燃ではなく関電の審査」との声が漏れる。それでも、9月の規制委との面談では関電出身者が自ら「(中心組織が)適切に機能していない」「必要な説明ができるレベルにない」と認める状況だ。
 見通しのない県外搬出策を打ちだすしかない関電の対応は、原発活用の限界を露呈している。

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