[2022_10_07_03]原発運転制限40年(長くても60年)の撤廃?! 原子力規制委が原発推進側に「屈服」 原発の運転期間が事実上無制限に 福島第一原発事故の教訓を「なし」にすることは許されない 直ちにこの見解を撤回せよ! 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年10月7日)
 
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原発運転制限40年(長くても60年)の撤廃?! 原子力規制委が原発推進側に「屈服」 原発の運転期間が事実上無制限に 福島第一原発事故の教訓を「なし」にすることは許されない 直ちにこの見解を撤回せよ! 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎10月5日の原子力規制委

 原子力規制委員会は10月5日、経産省資源エネルギー庁を呼んで審査会合を行った。
 この会合では、経産省は「原子炉等規制法第43条の3の32」に規定されている運転制限期間を「40年」に制限している条文の「40年」を削除することについて「説明」を行ったという。
 この条文は、福島第一原発事故の後に原子炉等規制法改正の一つとして、それまで運転期間を明記していなかったところ、運転期間を原則40年に制限すると共に、一回だけ「20年の延長を認める」とし、原発の老朽化に伴う事故への対処のために定められた条文だった。
 これを事故から11年半の今、基幹制限を事実上撤廃するというのだ。
 事故前の「緩い規制」に戻ることになり、実質的な規制の切り下げに他ならない。

◎時間と共に原発の事故の確率が上がる

 原発の運転制限を設けた理由の一つに、事故を起こした福島第一原発1号機は運転からちょうど40年を経過する時期に当たっていたことがある。
 メルトダウンをした他の2基も40年間近であったことから、事故の解析により特に1号機については、安全余裕が小さく、冷却能力が低かったことが予想以上の速度でメルトダウンをした原因と考えられた。そこで運転の制限期間を40年としたのだった。
 この時、当時の田中俊一原子力規制委員長は、延長を認めるとしても例外的としていて、原則として運転制限を40年としたことで再稼働時の原発の安全性を、福島第一原発事故を繰り返さない程度には確保できるとの見通しを示していたはずである。

◎交換不能な圧力・格納容器やケーブル類

 東海第二原発や美浜、高浜原発のような40年を過ぎた原発の審査で問題になっていたのは、老朽化に伴い劣化が進んでも、交換ができない構造物や設備の問題だ。
 特に中性子を浴びて劣化する圧力容器や、コンクリート建屋内に組み込まれていて劣化し穴が開いても補修工事ができない格納容器、さらに、原発全体に張り巡らされた電源ケーブル類は、損傷するまで劣化に気づかない可能性が高く、長期間運転のリスクが特に大きい。
 また、交換可能なポンプや配管であっても、定期検査時に全部を検査、交換しているわけではなく、全体を見終わるのに10年以上もかかるようなものさえあり、結局検査抜けで破壊されるまで放置されるものも存在する可能性がある。
 今の40年運転は、その前の30年での高経年化評価と延長運転申請を行うならば40年目までの審査を厳格に行うことで安全な稼働ができるとの考え方だ。
 しかし、運転期間の制限が法令上存在しなくなれば、そうした評価が運転許可と結びつかなくなり、規制が機能しなくなるだろう。

◎劣化が進めば安全設備の稼働にも影響が

 原発は全体が複雑に絡み合った装置であり、組み込まれた安全保護系の設備は前段が正常な動作をしなければ後段が予定通り動かないことは常にあり得る。
 そのため「前段否定」という考え方で安全審査を行っているが、実態として全部の安全設備について「前段否定」をしてしまうと、停止状態に持っていくことは出来ないものがいくらでもある。
 例えば、電源の全喪失を想定すれば、電源系統が正常に動かないと後段の動力駆動の安全注水系が動くわけがない。
 福島第一原発事故を教訓として、特定重大事故等対処施設など、原発の後備安全保護設備が追加されたが、これらはいずれも電源と水がなくては機能しない。
 また、原子炉を一定の圧力まで減圧する設備が機能しなければ、注水が出来ないのでメルトダウンを防ぐことが出来ない。
 決定的な意味を持つのは安全のため減圧する設備だが、これらも劣化と共に機能性が低下する。検査で交換や作動試験をしているとしても、経年劣化で動作しなくなると減圧に失敗し、高温高圧の環境で燃料破損を避けられないリスクがある。
 こうした安全保護系は、特に老朽化に弱い。

◎勝手に規制基準を切り下げることは許されない

 山中伸介規制委員長は、「40年の基幹制限は原発の利用政策であり規制委が口を出すことではない」という。
 安全規制を本務とする委員会が、それに極めて重要な意味を持つ運転制限期間について何も言わないというのでは、論外としか言いようがない。
 原発の老朽化が審査に重大な影響を及ぼすことは、いわば常識の範囲であって、規制側が厳しく見ようにも、実質的に検査を行っているのは事業者側である。
 規制委は形式的に(部分的には立ち会ったりしているが、検査結果を再検査しているわけではないし、できるわけもない)見ているだけだ。
 老朽化が進めば、劣化速度と検査により交換することができる範囲や程度が逆転し、交換しなければならないものを見逃したり、甘くしたりといった漏れや手抜きが必ず起きる。そしてそれを規制側は見逃してしまう。
 運転期間の制限は、これを防止するためにも有効かつ必要な制度であり、推進側の主張に配慮して外して良い規定ではない。
 規制委は、こうした姿勢を撤回し、改めて運転期間制限を守らせるよう、推進側を「規制」する責任があるのである。
 勝手に安全規制の根幹に関わることを解除するなど、許すことはできない。
 直ちにこの見解を撤回することを求める。
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