[2018_12_06_02]「核事故」は核と関係なく起きる 原発では一般公衆に回復不能なほどの被害をもたらす可能性 原発こそ脆弱な電源だということを改めて認識 上岡直見[環境経済研究所(技術士事務所)代表](たんぽぽ舎2018年12月6日)
 
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「核事故」は核と関係なく起きる 原発では一般公衆に回復不能なほどの被害をもたらす可能性 原発こそ脆弱な電源だということを改めて認識 上岡直見[環境経済研究所(技術士事務所)代表]

 12月4日に女川原発1号機で水漏れ事故が報道(時事通信)された。水は制御棒駆動装置の冷却水であり放射性物質はないという。原因はバルブの開閉ミスと推定される。女川原発1号機は既に廃炉が決まっているし、それ自体は大きな問題ではないかもしれない。
 しかし以前から脱原発に関わっている人は、1999年6月の志賀原発臨界事故を直ちに思い出したはずである。
 これは点検中にバルブの開閉ミスで予期せず制御棒が引き抜かれて臨界が始まった事故である。制御室では緊急停止操作をしたが、点検中のため安全システムが動かない状態になっていたため機能しなかった。最終的には手動操作で臨界は停止したが危機一髪だった。なおこの事故では経産省への事故隠し・報告遅れも発生している。
 原発の安全問題では、地震で壊れるとか火災とか機械的な議論に注目されがちだが、重大な「核事故」は、実は原発の中心部分ではなく核と関係ない小さな破綻から始まるのである。
 スリーマイル島原発(米国)事故は安全弁が開いたままで固着し水位計に気泡が混入して表示がわからなくなった。「もんじゅ」のナトリウム漏れは温度計の破損だった。福島第一原発もディーゼル発電機が水没して動かなかったため最終的な防護に失敗したが、ディーゼル発電機そのものは日本中にいくらでもある一般的な設備だ。
 このような設備や部品は、原発以外の分野でも世界中で何十万個か何百万個と使われている物品で、一定の確率で故障や操作ミスが避けられず、それらを常に完璧に動かすことは不可能なのだ。
 以前に広瀬隆氏が指摘していたように原発というものはこうした無数のトラブルの要因を抱えながら安全に動かすことは不可能である。
 そして同じ故障でも、火力発電所ならただ装置が止まるだけで済むところを、原発では一般公衆に回復不能なほどの被害をもたらす可能性が高い。原発こそ脆弱な電源だということを改めて認識した。

KEY_WORD:臨界事故隠し_:ONAGAWA_:SIKA_:MONJU_: