[2021_09_01_06]「権利に基づく闘い」が島根原発でも始まった 島根原発3号機は財産権を無視して違法に建設された 土地・建物の所有権や「のり島の権利」を無視 平塚義夫氏が原子力安全委員会に「要請および質問」書を提出 亀井亜紀子議員も質問主意書を提出 連載「権利に基づく闘い」その21 熊本一規(明治学院大学名誉教授)(たんぽぽ舎2021年9月1日)
 
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「権利に基づく闘い」が島根原発でも始まった 島根原発3号機は財産権を無視して違法に建設された 土地・建物の所有権や「のり島の権利」を無視 平塚義夫氏が原子力安全委員会に「要請および質問」書を提出 亀井亜紀子議員も質問主意書を提出 連載「権利に基づく闘い」その21 熊本一規(明治学院大学名誉教授)

◎ 島根県松江市鹿島町片句地区は、中国電力島根原発の西側に隣接した地区です。
 片句地区には「宮崎鼻」という岬があり、そこでは岩のりを初めとした海草を採取できます。
 地元では、そのような海草採取を行なう岬を「のり島(のりじま)」と呼び、海草採取の権利を「のり島の権利」、その権利者を「のり島権利者」と呼んでいます。(注1)
 宮崎鼻は、釣り場としても有名で、「釣り広場.com」(注2)というサイトにも紹介されており、多くの釣り人が訪れています。

◎ 中国電力は、島根原発2号機増設の際には、片句地区の「のり島権利者」と交渉を持ち、補償契約を交わして補償を支払いましたが、3号機増設にあたっては、当初、宮崎鼻全体を島根原発の敷地に組み込む計画を立て、「のり島権利者」と土地の売買交渉を行ないました。
 ところが、売買交渉が難航したため、宮崎鼻を除外した敷地計画に変更し、3号機増設に反対する「のり島権利者」を無視して、また、平塚義夫氏が2004年に宮崎鼻に建設した釣り人用の小屋の存在も無視して3号機増設を進め、2005年に原子炉設置許可を受けたのです。

◎ 以上のように、島根原発3号機は、宮崎鼻の土地所有権,「のり島の権利」及び小屋の所有権という財産権を無視して違法に増設されたのです。
 しかし、この違法行為は、権利者たちの抗議にもかかわらず広く知られることなく、長年、封印されたままでした。
 2021年8月25日、平塚義夫氏が原子力規制委員会に「要請および質問書」を提出しました。
 2005年設置許可に関して4項目の質問をするとともに敷地境界のテロ対策が不十分で不審者が侵入する恐れがあるとして、島根原発3号機の稼働の前提となる新規制基準適合性審査に合格を出さないよう要請している書面です。(注3)

◎ 実は、この書面提出の契機となったのは、本年6月に成立した重要土地利用規制法です。
 基地や原発等の周辺の土地利用を監視し、安全保障を脅かす土地利用を確認すれば所有者に中止を勧告・命令できるとした同法は、悪法に違いありませんが、平塚氏は、同法を逆手にとって、宮崎鼻の土地利用が安全保障を脅かす可能性があるにもかかわらず、それを無視して3号機の稼働を進めようとしている中国電力や国に切り込んだのです。
 平塚氏の「要請および質問書」に関して、8月27日に現場を視察した
亀井亜紀子衆院議員が政府に質問主意書を提出するとのことです。
 「要請および質問書」及び質問主意書への回答がどうなるか、注目していきたいものです。


1. 実は「のり島の権利」は入会権なのですが、ここではその説明は省きます。詳しくは拙著『漁業権とはなにか』184-192頁を参照。
2. https://c.turihiroba.com/turiba1/simanemiyazakibana.html
3. 筆者のホームページ(http://kumamoto84.net)に平塚氏の「要請および質問書」、及び平塚氏の取組みを紹介した山陰中央新報2021年8月28日の記事を掲げています。
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