[2021_08_20_05]中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (下) (了) 島根原発2号機は「原子炉立地審査指針」に違反している 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年8月20日)
 
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中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (下) (了) 島根原発2号機は「原子炉立地審査指針」に違反している 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

7.緊急対策所及びその居住性等に関する手順等(第34条、第61条及び重大事故等防止技術的能力基準1.18関係)について(480頁)

 全面マスクなしに7日間留まり、それに対応する飲食物を用意すると共にその間の総被曝線量が100ミリシーベルトを超えないこととしている。
 規定では「必須項目」としているから、中央制御室よりも強度を保っているべき設備と捉えられているが、これに加えて特定重大事故等対処施設が存在することになっている。
 緊急時対応において2つの司令所が存在しているのだが、その役割分担が記述されていないため、優先度や運用基準がわからない。
 緊急事態時に混乱を招く可能性が高くなるので、特定重大事故等対処施設との関係を明確にし、相対化すべきである。

8.原子炉圧力容器外の溶融燃料−冷却材相互作用(259頁)
 水蒸気爆発が実機において発生する可能性(263頁)について

 申請者中国電力は、原子炉圧力容器外のFCI(溶融燃料と冷却材の相互作用)のうち、水蒸気爆発は、実機において発生する可能性は極めて低いとしている。
 規制委員会は、「原子炉圧力容器外のFCIで生じる事象として、水蒸気爆発は除外し圧力スパイクを考慮すべきであることを確認した。」と、さしたる根拠もなく中国電力の言い分をそのまま受け入れ、水蒸気爆発は起こらないこととしている。
 そのうえで、格納容器下部に予め2.4mほど水を溜めて溶融燃料を受け止めるという世界に例の無い、危険な重大事故対処方針を決定している。
 水蒸気爆発を引き起こす危険性は「水蒸気爆発が実機において発生する可能性」において検討したものの「水蒸気爆発が発生したKROTOS、TROI」実験の結果を採用しないとした。
 しかし、水蒸気爆発の可能性はあるのだから、圧力容器外の溶融燃料対策として格納容器の水張りは誤っている。
 「ペデスタル注水」とは、コアコンクリート反応(溶融燃料と床などのコンクリートとの反応のこと)を防ぐためのものだが、反応は急激ではなく、これが直接格納容器を破損させるには相当程度の時間を要する。
 的確なブロックをしていれば格納容器破損は防止できるし、それは柏崎刈羽原発では実施している。
 一方、水蒸気爆発が発生すれば瞬時に圧力上昇が発生し格納容器破損に至る恐れが高い。 格納容器の加圧破損が発生してしまえば防止する方法は全て無効になる。優先度が高いのは水蒸気爆発の防止であり、コアコンクリート反応を防ぐにはコアキャッチャー等の方法を講ずべきである。

9.水素燃焼について(264頁)

 「さらに、対策の手順には、原子炉格納容器内の酸素濃度計に基づく判断が含まれており、原子炉格納容器内の水素濃度及び酸素濃度が可燃領域に至る前(酸素濃度が4.4vol%(ドライ条件)及び1.5vol%(ウェット条件)到達時)に、格納容器フィルタベント系を用いて原子炉格納容器内の気体を排出する手順としている。」との中国電力の対策に対して「これらにより、規制委員会は、G値の不確かさを考慮した場合においても、格納容器破損防止対策に有効性があることを確認した。」と結論づけるが、これは過酷事故対策において後段否定をしない想定である。
 すなわちフィルタベント系が使用できない場合では、どうするのかが解説されていない。 ベントは常に不安定で不確かな対策である。これが機能しないことを前提としてもなお水素爆発を回避できなければ、対策が出来ているとは言えないので審査は無効である。

10.地震による損傷の防止について(第39条関係)
  1.耐震設計方針(322頁)

 この原発は、そもそも立地指針に違反している。
 「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」(昭和三九年五月二七日 原子力委員会)によれば、「原則的立地条件」として「大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。」と規定している。
 宍道断層など有力活断層に囲まれている島根原発は、県庁所在地の松江市(20.6万人)に立地している。
 30キロ圏内人口は46万人に達し、さらに避難道路などの整備も困難な島根半島中央部にある。この原発で大事故が起きた場合、松江市の住民が避難できない風向きで放射性物質が拡散することも否定できない。
 「原子炉立地審査指針」を採用しないこととした規制委員会は、その理由を事故想定が合わなくなったなどとしている。
 そのとおりである。ならば、立地指針の枠組みで新しく過酷事故、福島第一原発事故を想定するように変更しなければならない。
 これまでの原発は全て立地審査指針に規定されて建てられた。
 しかし新規制基準適合申請審査においてこれを無効化したため、新基準と旧基準では全く異なる想定を前提としていることになる。
 これは行政処分の連続性と統一性を行政自ら放棄することであり、特に設置許可処分により影響を受ける立地地域住民に対する重大な背信行為である。
 旧指針において仮想事故を想定した際に、被ばく線量めやす値は「敷地境界で全身に対して0.25Sv」だったが、これが満足できなくなっている。
 立地指針を無効化するのであれば、既存原発すべての設置許可の取り消しをするべきである。
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