[2021_08_18_05]中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (中)(3回の連載) 津波想定に対して少なくても倍程度の余裕を見るべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年8月18日)
 
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中国電力島根原発2号機のパブコメ提出文章を紹介 地震、津波、避難計画に大きな問題 (中)(3回の連載) 津波想定に対して少なくても倍程度の余裕を見るべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

4.外部火災に対する設計方針

(3)発電所敷地内における航空機落下等による火災(112頁)
「5」大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対応(重大事故等防止技術的能力基準2.1関係)/497頁について。

 航空機ないし大型航空機の衝突または故意の攻撃について記述しているが、前段の航空機の衝突と後段の「故意による大型航空機の衝突」に関して整合性がない。
 攻撃を前提とした航空機の衝突の場合、確率は何の意味も持たず、かつ、複数の攻撃による損傷を考慮するならば、原発の複数面(原発の周囲4面の複数という意味)に緊急時対応用注水システムを設置していても意味を成さない。
 また、テロ対策というよりも武力攻撃による大規模損壊を想定して、それに対処することが出来るかどうか「大規模損壊が発生した場合における体制の整備に関して必要な手順書、体制及び資機材等が適切に整備」されているかどうか判断すべきだ。
 弾道ミサイル攻撃や爆撃などの攻撃を受けてさえなお、大規模損壊を発生させないなどは、信用することは出来ない。

5.津波による損傷の防止(第40条関係)(325頁)

 福島第一原発では、たかだか400年程度の期間の発生津波を既往津波として考えていたため、震災前には福島県塩屋崎沖の地震を最大想定とし、それに対する津波対策はわずか5.7(後に6)mとしていたため、日本海溝沿いで発生した東日本太平洋沖地震に対して全くの無力を晒してしまった。
 島根原発では記録の残る地震は太平洋側よりも更に少ない上、近年になって特に活動性に変化がある海域でもあり、過去の想定にとらわれず、十分余裕のある対策が求められるところだが、実際には基準津波を「基準津波の遡上波による最高水位はEL11.9m」(ELは東京湾海面標高のこと)としているため、敷地の海抜「EL8.5m」を考えれば「施設護岸に天端高さEL15.0m の防波壁」では余りに余裕がなさ過ぎる。
 過去の文献などからもこの地域は少なくとも施設護岸に天端高さEL20mの設備が必要と考える。
 津波想定に対して少なくても倍程度の余裕を見るべきだし、この地域の過去の文献も万寿津波の到達遡上高20m級の可能性は否定するべきではなく、この程度の津波を想定するべきである。

6.原子炉制御室及びその居住性等に関する手順等(第26条、第59条及び重大事故等防止技術的能力基準1.16関係)(460頁)

 「第37条において想定する格納容器破損モードのうち、原子炉制御室の運転員の被ばくの観点から結果が最も厳しくなる事故収束に成功した事故シーケンス(例えば、炉心の著しい損傷の後、格納容器圧力逃がし装置等の格納容器破損防止対策が有効に機能した場合)を想定すること。」とし、「運転員はマスクの着用を考慮してもよい。ただし、その場合は、実施のための体制を整備すること。及び「3」交代要員体制を考慮してもよい。ただし、その場合は、実施のための体制を整備すること。
 「4」判断基準は、運転員の被ばくによる実効線量が7日間で100mSvを超えないこと。
 「5」原子炉制御室の居住性を確保するために原子炉格納容器から漏えいした空気中の放射性物質の濃度を低減する必要がある場合は、非常用ガス処理系等を設置すること。
 「6」「原子炉制御室の居住性を確保するために原子炉建屋に設置されたブローアウトパネルを閉止する必要がある場合は、容易かつ確実に閉止操作ができること。また、ブローアウトパネルは、現場において人力による操作が可能なものとすること。」としている。
 なぜ「しなければならない」ではなく「してもよい」等の選択肢を設けているのか。これはあまりにも非現実である。
 既に福島第一原発事故において経験しているとおり、全面マスクが必要な環境において作業を強行したり人員を交代させることは極めて困難であるだけでなく、想定しているような電源喪失環境においては無意味でさえある。
 結果として炉心の大規模損傷を起こした後の話であるのだから、中央制御室はほとんど機能していない。
 特定重大事故等対処施設で代替注水システムを準備しているはずの新規制基準下において、どうして無理に中央制御室や建屋内部に作業員や運転員を送る必要があるのか。
 中央制御室や建屋内部からは撤収して、特定重大事故等対処施設で冷却や事故収束の指揮を行う方向に規制基準では対応を変えているはずではないか。
 矛盾した対応になっているので審査をし直すべきである。(下)に続く
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