[2022_12_04_06]運転開始40年に迫る川内原発 延長ありきの土地取得? 事故に備え、九電が特別点検前から用地交渉(南日本新聞2022年12月4日)
 
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運転開始40年に迫る川内原発 延長ありきの土地取得? 事故に備え、九電が特別点検前から用地交渉

 九州電力は、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が災害などで事故が発生した際の後方支援拠点とするため、いちき串木野市の市有地を新たに取得した。「原則40年」とされる運転期限が迫る中での新たな整備。市議会では「延長ありき」との声も上がった。対して九電は「用地選定に時間がかかった」と説明する。
 九電が新たに整備した用地は、荒川コミュニティ広場(約1万4500平方メートル)。川内原発の南東約10キロにあり、薩摩川内市との市境に近い。市から3108万円で購入し、11月1日までにトイレやあずまやを含めて所有権を移転した。
 川内原発は、1号機が2024年、2号機は25年に運転開始から40年を迎える。九電は今年10月12日、さらに20年の運転延長を求め、原子力規制委員会に申請した。
 延長申請に必要な特別点検を実施すると発表したのは21年10月。その際、申請自体は「点検結果を踏まえて判断する」としていた。
 ところがいちき串木野市の資料では、九電が市へ荒川広場の用地交渉を依頼したのは、点検実施発表からさらに10カ月前の20年12月にさかのぼる。広場の土地売却などが議題となった今年8月29日のいちき串木野市議会では、一部市議から「運転開始40年まであとわずかでの整備。延長ありきではないか」と批判が出た。
 川内原発の前川裕章・環境広報担当次長は「適地をしっかり探していた結果」と理由を説明する。これまで確保していた拠点用地のうち、原発の10キロ圏付近にあるのは、16年に整備した北東側の湯田用地(薩摩川内市)と東側の隈之城用地(同市)の2カ所。有事の風向きがどの方角でも支援拠点を設置できるよう南側も探したが、適地が見つからずにいたという。
 いちき串木野市との協議開始は20年末だが、市は17年に荒川広場を拠点候補地として九電側へ推薦していた。その経緯を踏まえ前川次長は、運転開始40年までわずかでの用地整備を「残り2年を短いとは思う」と認めながらも「支援拠点は万一の災害に備えてのもの。運転延長してもしなくても必要」と理解を求める。

 ■人口減の地元「反対する住民いなかった」

 荒川コミュニティ広場は、住民がグラウンドゴルフや花見に利用してきた。ただ、地域の人口減少により使用頻度は減っていた。管理していた荒川地区まちづくり協議会の竹之内茂美会長(73)は「1年間で数えるほどしか使われていない。それに比べ、年4回ある草払いの負担が大きい」と吐露する。
 九州電力が土地を取得してからも地域住民は広場を利用でき、草払いなど手入れは九電側が行う。竹之内会長は、説明会を通して支援拠点となることに反対する住民はいなかったとする一方、「もろ手を挙げてという訳ではない。ただ、人口減で地域だけでは広場を維持するのは大変だった。隣接する住民に迷惑さえ掛けなければ」と話した。

 【後方支援拠点】正式名称は「原子力事業所災害対策支援拠点」。東京電力福島第1原発の事故を受けて2012年、法改正を経て国が事業者に防災業務計画で定めるよう義務付けた。拠点用地は候補地として位置づけ、有事の際は事故状況によって一部または全カ所を後方支援拠点にする。原発へ搬入する資機材の中継や、自衛隊・警察と情報共有を行う場として活用する。
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