[2023_09_21_01]処理水問題 更田前規制委員長に聞く 放出、苦渋だが不可避(東奥日報2023年9月21日)
 
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処理水問題 更田前規制委員長に聞く 放出、苦渋だが不可避

 原子力規制委員会の更田豊志前委員長が20日までに共同通信のインタビューに応じ、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について「廃炉を進めるため苦渋だが不可避な選択だ。人や環境への影響は科学的に無視できる」と理解を求めた。計画では2051年まで放出が続くが「設備の老朽化や風評被害を考えると、より短い期問で終わらせるのが望ましい」との見解を示した。

 東電は処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度を、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満とするため大量の海水で薄めて放出する。8月24日から9月11日に実施した初回は200ベクレル程度で放出し、周辺の海水や魚のトリチウム濃度に異常は確認されなかった。年間総放出量は22兆ベクレル未満とする。
 更田氏は「過剰に薄めても科学的には意味がない。今の計画で30年かけて放出するのと、例えば10倍の濃度で3年で終わらせるのと、どちらが風評被害が大きいだろうか。10倍でも人や環境に影響が出るとは考えられない」と問題提起した。
 ただし今後数年間は東電が安定して設備を運用できることや、周辺のトリチウム濃度に異常がないことを確認し、風評被害の実態を調べる必要があると強調。「放出量を増やす議論ができるのはその後だ」と述べた。日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ヶ所村)のトリチウム放出管理目標値を適用すれば、第1原発の処理水は約1カ月で全量放出できるという。
 その上で「処理水のタンクが立っている場所は廃炉作業にとても良い場所だ。地盤が良く、これから寄りつきたい原子炉建屋にも近い」とタンクを撤去し、溶融核燃料(デブリ)取り出しなどに備えるベきだとした。
 今後の廃炉の課題として、約880トンと推定されるデブリや、さらに容量が多い汚染がれきの処分を挙げ「(処理水より)ずっと難しい。関係者の理解を得て処分するのに途方もない時間がかかるだろう」と述べた。

 インタビューに応じる原子力規制委員会の更田豊志前委員長
 <ふけた・とよし 前原子力規制委員会委員長。東工大院修了。1987年日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)入所。原子力基礎工学研究部門副部門長など歴任。2012年規制委員会委員、17年9月〜22年9月同委員長。23年4月から東京大上席研究員。66歳。茨城県出身>
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