[2023_08_01_01]「中間貯蔵施設」山口 上関町に建設可能か調査へ 中国電力 (NHK2023年8月1日)
 
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「中間貯蔵施設」山口 上関町に建設可能か調査へ 中国電力

 中国電力は、原子力発電所で使い終わった核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」を、原発の建設計画が進められている山口県上関町に建設することができるか調査を行う方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。使用済み核燃料は全国の原発にたまり続けている状況で、貯蔵場所の確保が大きな課題となっています。
 使用済み核燃料をめぐっては、搬出先となる青森県の再処理工場が完成せず、全国の原発の燃料プールにたまり続けている状況で、ことし3月時点で全国では77%、中国電力では67%が埋まっています。
 関係者によりますと、中国電力は上関原発の建設計画を進めている山口県上関町の土地の一部に、中間貯蔵施設を建設することができるか調査を行う方針を固めました。
 中間貯蔵施設は、原発の燃料プールにたまり続ける使用済み核燃料を原発の外に一時的に保管するための専用の施設で、調査では、地盤や地質などを調べる見通しです。
 中国電力は2日にも上関町を訪れ、調査する方針を町に説明することにしています。
 使用済み核燃料の貯蔵場所の確保は全国で課題となっていて、このうち、関西電力は82%がすでに埋まっている中、原発が立地する福井県から県外への搬出を求められていて、ことし6月、一部をフランスで再処理する計画を明らかにしていました。
 こうした中、大手電力でつくる電気事業連合会は各社の連携を強化し、使用済み核燃料の貯蔵能力を拡大していく考えを示しています。

 中間貯蔵施設とは

 使用済み核燃料の貯蔵場所をどう確保するのか、その対策の1つが原発の敷地外に一時的に保管する「中間貯蔵施設」です。
 中間貯蔵施設は、一定期間、冷却された使用済み核燃料をプールから取り出し、金属製の特殊な容器に入れて保管する専用の施設で、全国では東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市でいち早く建設に乗り出し、今年度の事業開始を見込んでいます。
 一方、原発の再稼働を進める関西電力は、原発が立地する福井県から、使用済み核燃料を県外に搬出するよう求められていて、ほかの電力会社よりも中間貯蔵施設の確保が切実な状況となっています。
 こうした中、電気事業連合会は3年前、東京電力などがむつ市に建設中の中間貯蔵施設についてほかの電力会社との共同利用の検討に着手したい考えを示し、翌年、関西電力はこの共同利用案も選択肢のひとつだと福井県に伝えました。
 しかし、むつ市は関西電力の核燃料の受け入れを全面的に否定しました。
 結局、関西電力はことし6月、使用済み核燃料の一部をフランスで再処理する計画を示し、福井県外へ搬出するという県との約束を果たしたという考えを示しました。
 ただ、搬出されるのは、関西電力が福井県内で保管している使用済み核燃料の5%ほどにすぎません。
 中間貯蔵施設の受け入れをめぐっては、地元の自治体にとって、保管する核燃料の量に応じて課される「核燃料税」という新たな税収などを確保できる可能性があります。
 一方で、核燃料サイクルが進まず、核燃料がいつまでため置かれるのかわからないことを不安視する声も上がっています。

 使用済み核燃料の課題

 今後、全国的に原発の再稼働が進む可能性がある中、電力各社にとって原発にたまり続ける使用済み核燃料をどうするのかが大きな課題となっています。
 日本は「核燃料サイクル」と呼ばれる政策を掲げていて、原発の使用済み核燃料から化学的な処理によってプルトニウムなどを取り出し、新たな核燃料として加工した上で、再び原発で利用する計画です。
 しかし、その中核を担う青森県六ヶ所村の再処理工場は、当初の計画では1997年に完成する予定でしたが、トラブルや不祥事などが相次ぎ、現時点の目標は2024年度上期のできるだけ早期の完成にずれ込んでいます。
 さらに工場内あるプールには、全国の原発からすでに使用済み核燃料が運び込まれていますが、すでに99%が埋まっている状態となっています。
 一方、大手電力でつくる電気事業連合会によりますと、ことし(2023)3月の時点で全国の原発にある燃料プールは、廃炉が決まっている福島県内の原発も含めて77.3%にあたる1万6510トンが埋まっています。
 このうち中国電力は島根原発の燃料プールの67.6%が埋まっていて、今後、2号機が再稼働すれば使用済み核燃料がさらに増えることになります。
 原発の燃料プールがいっぱいになると、原子炉から核燃料を取り出すことができなくなり、運転にも影響がでることから、電力各社にとって使用済み核燃料の貯蔵場所の確保が喫緊の課題となっています。

 「中間貯蔵施設」は上関町の新たな地域振興策に

 上関町では、中国電力から原子力発電所を建設する計画が持ち上がり、41年前に当時の町長が町の活性化をねらって、誘致を表明しました。
 町内では、原発にかかる国からの交付金を活用して、道の駅や温泉施設などが相次いで建設されてきましたが、2011年に東京電力福島第一原発の事故が発生し、中国電力は上関原発の工事計画の中断を発表。
 計画は事故から12年がたった今もストップしたままです。
 当初の計画では、2012年6月に工事が始まり、2018年3月に運転が開始される予定でした。
 一方、人口減少や少子高齢化に歯止めがかからず、財政もひっ迫している町は、ことし2月、町長が中国電力に対して新たな地域振興策を求めていて、今回の中間貯蔵施設の建設計画の提案は、こうした町からの要請への回答となる見通しです。
 中間貯蔵施設の誘致によって、地元には「核燃料税」と呼ばれる核燃料の保管量に応じて課される税の収入などが確保できる可能性があるほか、施設の建設工事に伴う労働者の流入といった経済的な効果が期待されます。
 一方で、使用済み核燃料は専用の金属製の容器に入れて保管することになりますが、こうした核物質の持ち込みを懸念する声もあります。

 住民団体の裁判を支援の弁護団が抗議声明発表

 中国電力が上関町に「中間貯蔵施設」を建設することができるか調査を行う方針を固めたという報道を受けて、地元の住民団体「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の裁判を支援してきた弁護団が抗議声明を発表しました。
 それによりますと「中間貯蔵施設の計画は上関の豊かな自然を破壊し、山口県民の生命を脅かす重大な問題である」と指摘しています。
 その上で「これまで中間貯蔵施設について山口県民は何の議論もしておらず、県民無視の中国電力の態度は決して許されるものではない」としています。

 上関町の住民は

 上関町の住民からはさまざまな声が聞かれました。
 70代の男性は「調査を行うこと自体はよいと思う。安全と安心が確立されて中間貯蔵施設が建設された場合、町の財政も潤うので人口減少が進む町の人口を増やす政策につなげることも可能だと思う」と話していました。
 また、大阪から帰省している70代の男性は「調査を行う方針を固めたことについて知らなかった。驚いた」と話していました。
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