[2023_07_29_02]福島第一原発の汚染水と原発(大事故を起こしていない)廃液は同じか? 同じではない、全く異質のもの 全ての放射性物質の排出を止めることが重要 (下) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年7月29日)
 
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福島第一原発の汚染水と原発(大事故を起こしていない)廃液は同じか? 同じではない、全く異質のもの 全ての放射性物質の排出を止めることが重要 (下) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
3.福島第一の汚染水は、こうした原発(大事故を起こしていない)
  から出る廃液とは全く異質です

◎ まず、デブリに接触してきた汚染水には、含まれる核種が極めて多く、ALPSで取り切れないものも多数含まれます。
 東電はALPSで二次処理、三次処理を繰り返すとしていますが、基準値以下にすることが目的ですから、多少含まれていても排出管理値を下回れば処理をやめます。
 含まれる放射性物質がいかに多種多様であろうと、個々の核種の総和が管理目標基準「1」を下回れば良いことになっています。合計の放射能量を個別管理するわけではありませんし、個別測定や評価もしません。
 代表核種を測定し、それにより推計するだけです。総量にも規制がありませんから、汚染水の量が大量であればあるほど、全体に含まれる放射能量は増えていきます。

◎ また、放出する量も137万トンは上限ではなく現時点のタンク容量に過ぎませんので、排出しつつも追加で発生する汚染水、それをALPSで処理した水は、理屈の上では無限になります。
 そうなると、汚染水が発生する限り排出が続くことになり、理屈の上では規制基準値(未満)掛ける無限の汚染物質が海洋投棄されることになります。そんなことは、原発では起こりません。運転期間内で放出は止まりますから。
 排出総量については、トリチウムの量も、いまの想定の700兆ベクレルはタンクにある量だけです。その後の追加で増える汚染水については総量は全く分かりません。国も東電も明らかにしていませんし、追及しても分からないと繰り返すだけです。

◎ 汚染水の発生量は、実際のところが「天候に左右される」のです。
 大雨が降れば汚染水は増え、その分放出放射能も増えるだけです。
 汚染水発生をゼロにしない限り、問題は解決しませんが、海に捨てれば良いと、方法が確立してしまえば汚染水対策は後回しにされるでしょう。
 むしろ貯水しなければならないとなっていれば、さすがに溜める量を減らす努力は最優先になるはずです。
 こうしたことからも、汚染水海洋投棄は、廃炉作業を大きく間違った方向にねじ曲げているものと考えます。

4.六ヶ所再処理工場が稼働したらどうなるか

◎ 六ヶ所再処理工場は、現在26回目の操業延期状態にあります。幸いなことです。この施設が永遠に動かないことを目指したいと思います。
 再処理工場では、原発の使用済核燃料を裁断機で切り刻み、強力な酸性の溶液、硝酸溶液につけて燃料の部分を溶かします。ステンレスやジルコニウム合金でできている核燃料の金属部品は溶けずに残りますが、これらも高濃度の汚染物で高レベルの放射性廃棄物です。

◎ この工程では、核燃料中のプルトニウムを分離精製するのですが、このままだと核兵器の材料にもなりますので、ウランと混ぜた溶液、ウラン・プルトニウム混合溶液として分離します。その後プルトニウム溶液とウラン溶液も分離し、硝酸を取り除き、ここでもプルトニウムの単体取り出しを防止するため酸化ウラン・プルトニウムと酸化ウランの粉末にして、それぞれ製品化します。
 残るのは放射性廃棄物となる高レベル放射性廃液です。これをガラスと混ぜて固化し、ガラス固化体という物体にして管理します。
 既に東海再処理工場や海外再処理で発生したガラス固化体が、六ヶ所村の「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」で保管されています。これを地下300m以深に埋め捨てするのが「地層処分」です。
 地下埋め捨て処分場の建設候補地として北海道寿都村と神恵内村が「文献調査」に手を上げ、大きな問題になっています。

◎ 再処理工場から排出される放射性物質は、核燃料に存在するものそのものですから、福島第一原発のデブリと理屈では同じです。それに接触した水ですから、汚染水と同様、様々な放射性物質の混合です。
 これを蒸発させたりフィルターで分離したりと、放射性物質を分離する設備を通して海中または大気放出するのですが、全部を取り切れないことは福島第一原発と同様です。
 そのため、様々なルートから入るストロンチウム90、ルテニウム106、セシウム137、プルトニウムなどの他、炭素14、コバルト60、マンガン54、ヨウ素129等が排出されます。
 加えて、水として排出されるトリチウム、気体で出てくるクリプトン85は、そもそも除去対象でさえないため、地球を広範囲に汚染し続けるのです。
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