[2023_07_08_08]長期事業の安全どう確保 処理水放出設備合格 設備劣化やミス防止課題(東奥日報2023年7月8日)
 
参照元
長期事業の安全どう確保 処理水放出設備合格 設備劣化やミス防止課題

 東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する設備が原子力規制委員会の検査に合格し、政府と東電が目指す「今年夏ごろ」の放出開始に向け準備が整った。しかし計画では放出完了までに約30年かかる。過去に例がない長期事業で、安全性をどう確保し続けるのかが重い課題となる。
 「極めて長期の設備運用になる。設備の劣化や運用ミスがないか丁寧にみていく」。規制委の山中伸介委員長は5日の記者会見で、放出開始後も監視を続けると強調した。来日した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は「処理水の最後の一滴が安全に放出されるまで、IAEAは福島にとどまる」と明言した。
 処理水の保管量は6月29日時点で約133万dと東京ドームの容積より大きい。さらに今後も発生し続ける。処理水には多核種除去設備(ALPS)で取り除けない放射性物質トリチウムが高濃度で含まれるが、東電は1年間で放出するトリチウムの総量に上限を設けるため、一気に大量放出はできない。1日の放出量は最大500トンに過ぎない。
 東電の計画では第1原発の廃炉を2041〜51年に完了するが、処理水の放出完了も51年としている。廃炉が遅れれば、放出完了も遅くなる恐れもはらむ。
 海底トンネルを使った廃液放出は北陸電力志賀原発(石川県)や日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(六ヶ所村)でも実施している。しかし事故を起こした原発で新たにトンネルを掘り、大量の海水で薄めて放出するのは前例がない。
 放出する処理水はまず測定・確認用タンクに送り、トリチウム以外の放射性物質が基準値未満となっていることを確認する。基準値を超えていれば再度、ALPSで浄化する。最初に放出する予定の1万トンはすでに問題がないと確認済みだ。
 その後は大量の海水で100倍以上に薄め、トリチウム濃度を国の基準の40分の1未満にする。海水ポンプは3台用意し、1台は待機させて緊急時に備える。放出前に巨大な立て坑にいったんため、トリチウム濃度を最終確認する。
 ポンプや流量計の故障や、処理水の放射線監視装置が異常を検知した場合などは、2カ所に設置した緊急遮断弁を閉じて放出を止める。うち1カ所は海抜11・5メートルの高台に設置し防潮提で囲う。
 検査終了証を受け取った東電の松本純一処理水対策責任者は「メンテナンスをしっかりやり、運転員の操作訓練、異常時の対応訓練を積み重ねたい」と述べた。
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_:ROKKA_:SIKA_:廃炉_: