[2022_12_23_03]核燃料サイクル、最終処分場のめどもなく…後始末避けて原発回帰に突き進む政府(東京新聞2022年12月23日)
 
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核燃料サイクル、最終処分場のめどもなく…後始末避けて原発回帰に突き進む政府

 原発の60年超運転や次世代型原発の建設を盛り込んだ政府の原発積極活用の基本方針は、原発の稼働に伴って出る放射性廃棄物の後始末に具体策がない。実現のめどが立たない核燃料サイクルや高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定は、道筋が見えないまま。後始末を解決せずに原発を使っても、ごみ置き場が足りずに稼働できなくなる日が必ずやって来る。(小野沢健太)

 ◆再処理工場は完成延期26回

 「もう何一つ信用できない」「何十年も審査を続けるつもりか」
 11月にあった原子力規制委員会の審査会合。日本原燃(青森県六ケ所村)の役員たちの前で、規制委事務局の審査担当者は声を荒らげた。核燃料サイクルの中核施設の再処理工場の稼働に向けた審査は、原燃が誤ったデータを審査資料に記載するなど能力不足を露呈し、規制委側が「指導」する場面が恒例になっている。
 再処理工場は試運転中のトラブルや審査の難航で完成延期を26回も繰り返し、当初の稼働予定から25年が過ぎた。

 ◆電気料金通じて国民に負担

 原発活用の検討を巡っては、経済産業省は9月末から有識者会議で議論を開始。原発の運転期間延長や、次世代型原発の開発などの活用策ばかりに議論が集中し、廃棄物対策は置き去りになった。再処理工場の稼働は見通せず、MOX燃料を使える原発も現状で4基しかない。核燃料サイクルの破たんは明白な状況にもかかわらず、その是非は一切議論されなかった。
 経産省がまとめた活用策には、再処理工場の稼働に向けて「審査への確実、効率的な対応」など抽象的な対策が並ぶ。総額14兆円超とされる再処理事業は打開策もなく続き、電気料金を通して国民に重くのしかかる。

 ◆プールにたまり続ける使用済み核燃料

 再処理に回す使用済み核燃料も、各原発の貯蔵プールにたまり続けている。電気事業連合会によると、今年9月時点で再稼働済みの原子炉がある6原発の貯蔵率は82%。関西電力は、40年超の老朽原発を稼働する条件として、来年末までに福井県外の貯蔵施設の候補地を提示することを県に約束。しかし、候補地選定は進まない。他社も敷地内での置き場増設などを検討するが、急場しのぎで根本的な解決にはならない。
 再処理の過程で発生する核のごみの最終処分場の選定も不透明だ。核のごみは極めて高い放射線を放つため、地下300メートルより深い岩盤にごみを埋め、数万年以上、人間の生活環境から隔離する。原発の運転を続ける以上、最終処分場は不可欠だが、2020年11月に北海道の寿都町、神恵内村が選定に向けた手続きに入って以降、新たな候補地は出てこない。
 さらに、北海道の鈴木直道知事は11月の記者会見で「手続きを進めることは反対」と明言。政府は地元自治体が反対すれば先に進まない方針で、選定にこぎつける可能性は低い。
 今回の政策見直しでは、使用済み核燃料や最終処分についての議論も低調で、検討結果は電力事業者の努力に委ねるほかは、国が自治体や住民の理解活動に注力することなどで、従来の取り組みの延長線上だ。
 困難な後始末から目をそむけ、性急に原発回帰を決めた岸田政権の選択は、将来世代に大きなツケを回すことになる。
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