[2025_05_16_04]益田 経済関係者 核のごみ最終処分地選定 請願書提出を検討(NHK2025年5月16日)
 
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益田 経済関係者 核のごみ最終処分地選定 請願書提出を検討

 18:18
 原子力発電に伴って発生する、いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定をめぐり、島根県益田市の経済関係者で作るグループが、市議会に対し、第1段階となる、「文献調査」への応募を市に働きかけるよう求める請願書の提出を検討していることがわかりました。
 いわゆる「核のごみ」は、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物で、強い放射線を長期間出し続けることから、地下300メートルより深くに埋めて最終処分を行うことが、法律で決まっています。
 その処分地の選定をめぐり、益田市の経済関係者で作るグループが、市議会に対し、第1段階となる、「文献調査」への応募を市に働きかけるよう求める請願書の提出を検討していることがわかりました。
 グループの代表を務める、益田商工会議所の松永和平会頭は16日、報道各社の取材に対し、実際に請願書を提出するかどうかも含め、時期などについて調整中だとしています。
 その上で「現状、原発抜きのエネルギー政策は考えにくいと考えている。文献調査を行い、地元のために次の世代が選択できるよう、検討する方法もあると思う」と述べました。
 一方、益田市の山本浩章市長はNHKの取材に対し、グループの関係者から、請願書の提出を検討していることを伝えられたと明らかにした上で、「現段階では何とも言えない」と述べました。
 最終処分地の選定をめぐっては、北海道の寿都町と神恵内村、それに、九州電力の玄海原発が立地する、佐賀県の玄海町でも「文献調査」が行われています。

 【益田市のグループ代表 「文献調査で地元のために次の世代が選択できるよう検討する方法も」】

 請願書の提出を検討している益田市のグループ「エネルギー研究会」は、2019年、益田商工会議所の会頭や地元の企業経営者などの経済関係者9人によって設立されました。
 国のエネルギー政策について議論を重ねていて、青森県六ヶ所村で建設中の使用済み核燃料の再処理工場や国の機関がいわゆる「核のごみ」の処分技術を研究している北海道幌延町の施設などを視察してきました。
 研究会の代表で、益田商工会議所の会頭も務める松永和平さんは「現状、原発抜きのエネルギー政策は考えにくいと考えている。文献調査を行い、地元のために次の世代が選択できるよう、検討する方法もあると思う」と述べました。
 その上で、文献調査の次の段階については、「全く考えていない」と述べ、最終処分場そのものが益田市に設置されるべきかについては別の問題だと強調しました。

 【益田市 山本市長「見極めたい」】

 益田市の山本浩章市長はNHKの取材に対し、すでに、グループの関係者から、請願書の提出を検討していることを伝えられたと、明らかにしました。
 その上で、「請願書の文面を見ていない段階では何とも言えない。市議会がどのような議論をするのか、市民の声はどうなのか、見極めたい」と述べるにとどまりました。

 【丸山知事 “文献調査に反対”】

 島根県の丸山知事は16日、県庁で取材に応じ、「文献調査が行われた場合、風評被害が生じると懸念している。益田市への来訪者が減るなどの事態が避けられない」と述べ、文献調査に反対する考えを示しました。
 また、先月、益田市の経済関係者で作るグループの代表から直接、請願書の提出を検討していることを伝えられたとして、断念するよう求めたことを明らかにしました。
 その上で、「益田市の市民や県民に自分の考えを伝えていきたい。請願書の提出の検討が断念されるよう、取り組んでいきたい」と述べ、あくまでも反対の姿勢を強調しました。

 【処分地の選定のプロセス 各地の動きは】

 核のごみの処分地の選定について定めた「最終処分法」では、選定に向けた調査は3段階に分けて20年程度かけて行われることになっています。
 はじめに、論文などの資料をもとに火山や断層の活動などを調べる「文献調査」を2年程度かけて行い、次に、ボーリング調査などで地質や地下水の状況を調べる「概要調査」を4年程度実施、最後に、地下に調査用の施設を作って、岩盤や地下水の特性などが処分場に適しているか調べる「精密調査」を14年程度かけて行うという想定です。
 はじめの「文献調査」は、自治体が公募に応じるか国の申し入れを受け入れることで開始されますが、第2段階から先の調査に進むには、対象の自治体の長に加えて都道府県知事の同意も必要になります。
 また、調査の対象となった自治体には、段階に応じて交付金が支払われ、交付額は、「文献調査」で最大20億円、「概要調査」では最大70億円となっています。
 全国では、5年前の2020年から、北海道の寿都町と神恵内村を対象に初めての「文献調査」が行われ、去年11月、第2段階の「概要調査」に進むことができるとする報告書が地元町村と道に提出されています。
 また、去年6月からは、原子力発電所が立地する自治体では初めて、佐賀県玄海町でも調査が始まっています。
 このうち神恵内村と玄海町では、議会で調査の受け入れを求める請願が採択されたあと、国の申し入れを受ける形で調査の受け入れを決めました。
 一方、おととし9月には、長崎県対馬市の市議会が調査の受け入れを求める請願を採択したものの、市長が調査を受け入れない意向を表明し、調査に至らないケースもありました。
 調査が進む自治体などからは、結論ありきにならないよう全国で調査を行うよう求める声も上がっていて、政府は、少なくとも「文献調査」や次の「概要調査」の段階までは複数の自治体で調査を行う方針で、さらに調査地点を増やすことを目指しています。
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