[2016_09_26_02]「もんじゅ廃炉」受け原子力関係者 県内施設「支障なし」 プルサーマル進展が鍵 なお見通せぬ高速炉研究(東奥日報2016年9月26日)
 
 高速増殖炉もんじゅ(福井県)の廃炉問題を巡り、県内に核燃料サイクル関連施設を立地する原子力事業者は「もんじゅが廃炉になっても、(県内施設の)運転に支障はない」と影響を否定してみせ、再処理したウランやプルトニウムを一般の原発で利用するプルサーマル発電(軽水炉サイクル)を進める姿勢だ。政府や電力業界にとって、「もんじゅ廃炉」は大きな決断だが、政策変更ではないとの立場。プルサーマルの進展が鍵を握る。ただ、課題はあり将来的なサイクルの行方は不透明となっている。曲がり角にあるサイクルの周辺を探つた。  (阿部泰起)

 政府と電力業界の当初計画では、サイクル政策はもんじゅによる高速増殖炉サイクルが本命だった。高速増殖炉は使った以上のプルトニウムを生み出し、さらに再利用することで、エネルギー不足の解消になると開発が進められてきた。
 一方、プルサーマルは一般原発に比べてもコスト高となる。内閣府の資料によると、ウラン燃料は1トン当たり約2億7千万円で、M0X燃料は同4億2千万円とかなり割高だ。
 もんじゅが稼働不能の中、電気事業連合会は核兵器に転用可能なプルトニウムの消費を進める必要から、原発16〜18基でのプルサーマル発電を計画してきた。だが、現時点で稼働しているのは四国電力伊方原発3号機(賽県)1基のみ。
 「利用目的のないプルトニウムは持たない」という国際公約を実現する見通しは立っていない。プルサーマルの切り札とされる、電源開発(Jパワー)による大間原発も運転開始時期を2024年度ごろに2年延期したばかりだ。
 もんじゅ廃炉が及ぼす影響は予想されたとはいえ重大だ。六ヶ所村に再処理工場などを立地する日本原燃は「原燃施設は軽水炉サイクルであり、支障があるわけではない」と説明。大間原発を建設中のJパワーも「もんじゅの動向にかかわらず、サイクルが維持されれば大間原発の運転には影響がない」と指摘。むつ市に使用済み核燃料中間貯蔵施設を建設するリサイクル燃料貯蔵(RFS)は「国のエネルギー基本計画にある通り、操業に向けしっかりやっていく」とした。
 「もんじゅに関係なく、サイクルを進めることば可能。私たちは青森県の六ヶ所再処理工場、MOX燃料工場を完工させ、プルサーマル計画を着実に推進することが核燃料サイクルの確立につながると思っている」。電事連の勝野哲会長(中部電力社長)は16日の定例会見で、サイクルの軸足はプルサーマルだと強調した。
 しかし、プルサーマルには、高速増殖炉サイクルに比べてプルトニウム消費量が圧倒的に少ないという弱点がある。また、中核施設の六ヶ所再処理工場は22回もの完工延期を繰り返している。
 政府は21日の原子力関係閣僚会議で、もんじゅについて廃炉も含め抜本的な見直しを行うーとし、新たに高速炉の研究開発に取り組むと表明。「サイクル推進は堅持する」と明言した。
 具体的にはもんじゅの前段階の実験炉「常陽」の再稼働やフランスで計画中の高速炉「ASTRID(アストリッド)」での共同研究などを想定。もんじゅ廃炉後をにらんだポストもんじゅの、新たな高速炉の開発に向けて会議の新設も決めた。
 ただ、高速炉研究もまたその行方を見通せるわけではない。日本にブルトニウムの平和利用を認め、18年7月に期限を迎える日米原子力協定の更新に影響を及ぼしかねない。
 経済産業省の担当者は「日米原子力協定は六ヶ所再処理工場についての包括同意がメイン。(もんじゅ廃炉が)今後の取り扱いに影響を与えるものではない。今回の高速炉に関する検討に関してはアメリカへの理解活動も丁寧に進める」とし、高速炉研究を継続する姿勢をアピールした。
 原燃の六ヶ所再処理工場では約3千トンの使用済み核燃料を一時貯蔵している。しかし、あくまで再処理するのが前提。国からは最終処分地にしない旨の確約を得ている。県は仮に再処理事業から撤退する事態となれば、六ヶ所村に貯蔵している使用済み燃料を県外に搬出し、各原発に返送するとの覚書を日本原燃と交わしている。
 核燃料が返送される状況となれば、全国の原発にある燃料プールが満杯になり原発は稼働できなくなる。このことは、日本の原子力政策そのものが行き詰まることを意味する。
 各社の財務状況が悪化するのも明白。本県との覚書がサイクル撤退を止めるくさびになっているとの指摘もある。先の展望は視界不良との見方も強まっている。

 核燃料サイクル 原発から出る使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムやウランを混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用する国のエネルギ,政策。当初、MOX燃料を高遠増殖炉で使う「高速増殖炉サイクル」の実現を目指したが、原型炉もんじゅの開発が、頓挫。国は代替策として、一般の原発(軽水炉)でMOX燃料を使う「プルサーマル発電」(軽水炉サイクル)を政策の主軸に据えた。
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