[2022_02_03_02]20万人避難想定、訓練は400人 女川原発、コロナで参加小規模の見通し(河北新報2022年2月3日)
 
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20万人避難想定、訓練は400人 女川原発、コロナで参加小規模の見通し

  
政府と宮城県、月内実施で最終調整

 新型コロナウイルスの影響で1年延期された東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の原子力総合防災訓練について、政府と県は今月の初開催に向けて最終調整を進めている。重大事故時、半径30キロ圏の約20万人(2019年4月時点)が県内31市町村に逃れる避難計画の実効性が疑問視される中、住民避難訓練の参加者はオミクロン株の「第6波」襲来で、400人程度にとどまる見通しだ。自治体の円滑な対応や移動手段の確保、避難経路の渋滞といった課題の検証が不十分に終わる恐れがある。

ヘリを使った避難も

 石巻市は30キロ圏にほぼ全域が含まれ、避難計画では14万人余りが27市町村に分散移動する。市によると、今回の訓練ではバスのほか、牡鹿半島の鮎川地区から船舶、離島からはヘリによる避難も実施する。参加者は市職員を除くと計50人ほどだ。
 約6500の全人口が避難対象の女川町では、計78人がバス7台で栗原市に向かう。行政区長を通じて募集したものの、新型コロナ感染拡大もあって積極的な呼び掛けは控えた。担当者は「避難車両による渋滞の検証は難しく、避難路の確認が目的になる」と話す。
 30キロ圏に一部が入る東松島市(避難対象約3万6400人)は、34人がバス2台に乗って名取市、亘理町に行く。登米市(9700人)では2地区の計200人に参加を依頼する予定だが、担当者は「まん延防止等重点措置が適用されても訓練を決行すれば、参加率が下がることが心配だ」と気をもむ。

「参考にならないかも」

 30キロ圏の周縁3町は、さらに参加者が少ない。涌谷町(約700人)、美里町(約100人)はともにマイクロバス1、2台規模を想定。南三陸町(約1700人)では1地区の5、6人がワゴン車1台に乗り込み、町内に設ける避難退域時検査場所に移動する。
 南三陸町の担当者は「感染症流行下でも原子力災害が起きる可能性はあるが、感染不安を考えれば参加を促せないのが本音。実際の参考にはあまりならないだろう」と明かす。「全員にPCR検査をするのは体制的に難しい」(涌谷町)との声もある。
 避難計画では、避難先の自治体が避難所などの設置と初期運営を担い、避難元の自治体に引き継ぐ。相互理解が重要だが、避難者を受け入れる側に積極的な関与を求める県の姿勢は乏しい。

仙台市は情報伝達訓練のみ

 女川町の全町民を18施設で受け入れる想定の栗原市は、1月末時点で「訓練の規模を知らされておらず、対応を検討できない」と困惑。石巻、東松島両市民の計約6万5000人を受け入れる仙台市は今回、情報伝達訓練のみに加わる。
 市危機対策課の担当者は「県から受け入れ訓練を実施するかどうかの確認はなかった」と説明。「市の職員だけで避難所を運営できない場合も想定され、このままだと行き当たりばったりの対応しかできない。県は主体的に実効性を高める努力をしてほしい」と注文する。
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