[2023_07_28_11]国内最古の原発が再稼働…高浜1号機 使用済み核燃料の行き場は確保されないまま(東京新聞2023年7月28日)
 
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国内最古の原発が再稼働…高浜1号機 使用済み核燃料の行き場は確保されないまま

 関西電力は28日、運転開始から48年が過ぎ国内で最も古い高浜原発1号機(福井県高浜町)を、12年ぶりに再稼働させた。9月には2番目に古い同2号機の再稼働も予定し、廃炉中を除く関電の7原発全てが稼働する見通し。稼働中の美浜3号機(同県美浜町)を加えて40年超運転の3基は、使用済み核燃料の県外搬出を実現できない場合に運転停止を約束しており、綱渡りの稼働体制が続く。(小野沢健太)

 ◆「約束」を守れなければ稼働停止

 関電は立地自治体の福井県に対し、今年末までに県外に使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地を確定させ、2030年ごろに2000トン規模の施設を造ると約束。守れなかった場合、3基の運転を停止するとした。
 県外への核燃料搬出について、関電は6月、高浜原発の使用済み核燃料約200トンを20年代後半にフランスの再処理工場へ搬出すると県に報告。保管場所の確保は再処理技術の実証研究へと変わり、搬出量も10分の1に減ったにもかかわらず、関電は「約束は果たした」との見解を示した。
 この主張に、県側の態度は硬化。杉本達治知事は今月13日、県議会や立地自治体の首長らの反応を踏まえ、「今までの約束には、まだ至っていないという思いが強くにじみ出ている」と不信感をあらわにした。
 原発を推進する立場の自民党県議からも疑問の声が上がる。6月の県議会代表質問で、自民会派の会長を務める山岸猛夫議員が「(関電の報告は)お茶を濁しただけ」と断じた。県の判断次第では、3基が運転できなくなる可能性もある。

 ◆1990年代から問題を先送りし続けた

 この状況は、核のごみと呼ばれる廃棄物問題を後回しにして原発の稼働を続ける電力業界と政府の無責任体質が招いた。関電は1990年代以降、県から県外の使用済み核燃料の保管場所確保を求められてきたが、先送りを繰り返した。
 状況を打開しようと、電気事業連合会は20年、青森県むつ市に東京電力と日本原子力発電が整備した中間貯蔵施設を共同利用する救済策を打ち出した。ところが、むつ市が強く反発して実現せず、電力業界の見通しの甘さを露呈した。
 国内で保管場所を見つけられず、関電は海外を頼るしかなかったが、予定する搬出量はわずか。3原発の使用済み核燃料プールは3月時点で容量の83%が埋まり、5〜7年後に満杯になる。大量に保管できる場所を確保しない限り、関電は全7基を動かせなくなる。

 使用済み核燃料 原発で使った核燃料は、敷地内の使用済み核燃料プールに保管される。日本政府は、使用済み核燃料を化学処理(再処理)して加工したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を原発で再利用する核燃料サイクル政策に取り組むが、再処理工場(青森県六ケ所村)が完成延期を繰り返し実現の見通しが立っていない。使用済み核燃料は各原発のプールにたまり続け、2023年3月時点で原発を保有する電力10社のプール容量の74%が埋まっている。プールが満杯になると、核燃料の交換ができず原発は動かせなくなる。
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