[2022_11_14_03]目に“見えない”原子力事故「情報だけで避難しなければならない初動の課題」原発避難委論点456の検証(新潟放送2022年11月14日)
 
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目に“見えない”原子力事故「情報だけで避難しなければならない初動の課題」原発避難委論点456の検証

 東京電力柏崎刈羽原発を巡っては新潟県独自の3つの検証の一つ、『事故が起きた際の避難』について検証委員会がおよそ5年をかけて議論し、456の論点を取りまとめました。
 避難検証委員会の委員から話を聞き、残された課題などをシリーズでお伝えします。
 今回話を聞いたのは、災害の情報伝達などを専門とし避難に関する検証委員会の委員長を務めた東京大学大学院の関谷直也准教授です。

 【関谷直也委員長】
 「東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、検証してこなかった課題が多かったと私は思っていまして、そういった避難の課題ってみんなが認識していたことですが、それを検証しないまま、内閣府原子力防災、規制庁の方で様々な計画が立てられていて…。今西日本の方ではすでに再稼働が始まっています。それを隣県である新潟県で改めて議論したというのは、それなりに意味があったことだろうと思いますし、一緒に議論して頂いた委員の皆様には感謝したいと思います」
 関谷委員長が挙げる避難の課題、それは『事故の初動における情報伝達』です。

 【関谷直也委員長】
 「地震や津波と違って、原子力事故の避難とは目に見えない、体感できないものなので、情報によって避難せざるを得ません。ですので、まずは事業者そこからメディア、人々がそこでどういう風に判断をして、逃げるのかということを考えなければいけないのですが、初動がうまくいったことは過去に1回もないんですね。日本だと、JCOの臨界事故、福島第一原子力発電所事故、両方とも数時間単位で初動の情報は遅れています。チェルノブイリ原子力発電所も最初の避難の段階において、最初住民には知らされなかったという問題があります。初動でうまくいったことは原子力発電所の事故においてはないが、初動にできるだけ早く避難をするというのがどれぐらい被ばくをするかを決める。つまり一番大きな要素になるのが最初の情報伝達になります」
 1999年に茨城県東海村で起きたJCOの臨界事故や2011年の福島第一原発の事故。
 いずれも情報発信が遅れたり正しく伝わらなかったりして原発事故の初動の情報伝達は大きな課題となっています。
 今回の検証委員会では初動の情報伝達について、東京電力などへのヒアリングにも時間を費やしましたが、県として『他の機関を検証する』難しさを感じたとも話します。

 【関谷直也委員長】
 「なかなか他の機関であるというところから解決策が見いだせなかった。そこが一番大きな課題であったし、避難に関してはそこが一番重要な部分。今後も議論をし続けていかなければいけないところは、初動の情報伝達の問題だと思っています。」
 そして関谷委員長が特に課題だと指摘するのが地震や津波などが原因となった事故ではなく、原発の単独事故の場合です。1999年の石川県志賀原発では臨界事故が起きていたにも関わらず事故自体が隠され、公表されたのは2007年でした。
 地震や津波という複合災害による事故であれば、災害という大きな“きっかけ”を発端に情報を出すように働きかけをすることもできますが、単独事故の場合はより初動の情報伝達が大きな課題となっています。

 【関谷直也委員長】
 「単独事故の場合は、事業者からきちんと情報を得て、そのあとにモニタリングを開始して、ちゃんと情報を得られないと、避難のタイミングが遅れてしまいます。そこに関してはやはり大きな課題があるだろうと思っています。事業者と県との連絡体制や、それをいち早く県民に伝えるべき義務があることをきちんと事業者の方に強く働き続けることが重要だと思います」
 検証委員会は『実効性ある避難計画』について議論を進めてきました。
 関谷委員長が考える『実効性のある避難計画』とは…?

 【関谷直也委員長】
 「もしも原子力発電所の事故が起きた場合は避難せざるを得ない。実効性、避難計画の実効性というのは効果の『効』という字を書きますが、効果があるかないかは別にして…。原子力発電所の事故が起こった場合の実効性云々を議論するのは行政側の考え方で、実効性があろうがなかろうが、自分や家族の健康を守るためにまず避難をして防護措置をとるというのが住民側には必要なはず。
 私としては原子力からの防護措置避難のことを考えたときに、実効性ばかりに議論の焦点が当てられてしまうのはそれ自体が問題なのではないかなとは思います」

新潟放送
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