[2022_09_16_03]無責任な国の原子力防災 一例:ヨウ素剤服用に必要な放射性ヨウ素の測定値(測定に1日必要)をだれがどう判断に利用するのかということすら決まっていない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕 〔法政大学法学部 非常勤講師(環境政策)〕(たんぽぽ2022年9月16日)
 
参照元
無責任な国の原子力防災 一例:ヨウ素剤服用に必要な放射性ヨウ素の測定値(測定に1日必要)をだれがどう判断に利用するのかということすら決まっていない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕 〔法政大学法学部 非常勤講師(環境政策)〕

 
◎ 9/5発信【TMM:No4572】でも報告されたように、新潟県の避難方法に関する検証委員会が終了した。
 これに関する評価は改めて取り上げるとして、委員会での議論の過程で、国の原子力防災がきわめて無責任であることが露呈し、福島第一原発事故の教訓がほとんど活かされていないまま、いわゆる「合格」だけで(規制委員会は「安全」とは言っていない)再稼働が進められている。

◎ 一つ驚くべき例を挙げると、ヨウ素剤の服用である。
 そもそもヨウ素剤は放射性ヨウ素以外の核種には無効なので限られた効果しかないが、それさえも全く破綻しているのである。
 ヨウ素剤は、放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に服用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができるとされる。

◎ それでは、いったい誰がどうやって「24時間前」に服用の指示を出すのだろうか。
 これについて委員会では内閣府の担当者を呼びヒアリングしたが、回答は「事故の進展や風向きなどを見ながらヨウ素サンプラ(モニタリングポスト)の測定値を確認し、放射性物質の浮遊の状況等様々な状況も見極めた上で対応する」「そのため、タイミングは容易には示せない」という。

◎ ヨウ素サンプラは、いわゆる「線量計」とは違って、リアルタイムで測定値が出るのではなくサンプルを分析設備に持ち帰って測定する必要がある。
 これについて担当者は測定には1日程度を要すると回答した。
 また道路の渋滞状況によって不定であるなどとも言っていた。
 そうすると服用指示が出るのは住民が放射性ヨウ素を吸入して内部被ばくした後であり、防護対策が全く破綻している。

◎ 委員の一人からの指摘によると、測定をどのように使うのか国に問い合わせたところ、現時点では緊急時の防護判断のための情報として位置づけていないというのである。
 測定設備は毎年予算をつけて増設しているが、そこで測定された値をだれがどう判断に利用するのかということが決まっていないという。
 これが国の原子力防災の実態である。
 再稼働など言い出せる状態ではない。

※これらは近く公表予定の検証委員会報告書や議事録に収録されるので参照していただきたい。
KEY_WORD:KASHIWA_:FUKU1_: