[2023_06_03_04]福島第1原発処理水問題 地元理解得られぬまま、迫る海洋放出(毎日新聞2023年6月3日)
 
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福島第1原発処理水問題 地元理解得られぬまま、迫る海洋放出

 2023/6/3 16:07
 政府と東京電力が準備を進める福島第1原発の処理水海洋放出。東電は5月、原発構内の準備状況を茨城、千葉両県の報道関係者に公開し、「6月末までの工事完了を目指す」と説明した。政府が「夏ごろ」と見込む放出開始の条件は「(地元の)理解」とする一方で、漁業者の反対が続く中で放出する可能性について「答えが難しい」と含みを持たせた。
 構内では海洋放出に備える配管工事などが行われていた。処理水を保管するタンクは1000基超あり容量は計約137万トンだが、貯蔵量は5月16日時点で約97%に当たる133万トンに達した。東電は、雨量に応じて「2024年2〜6月」にタンクが満杯になる見通しを説明。「タンクが減らないと廃炉に必要な施設を作りようがない」として、タンクは増設しない方針だ。
 22年9月末に始めた魚介類の飼育試験も公開した。「視覚的に安全性を示すため」飼育状況をネットで配信している。福島第2原発が臨む港湾から採取した海水と、海水で薄めた処理水の入った2種類の水槽でヒラメとアワビを飼育し、生存率などを調査。東電は「2種類の水槽とも生育状況は変わらない」という。
政府と東電は15年、「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分もしない」と福島の漁業者に約束。福島や茨城の漁業者を含む全国漁業協同組合連合会は一貫して放出に反対している。
 報道陣に対応した東電広報室リスクコミュニケーター、高原憲一氏は、茨城沿海地区漁協連合会の意見も放出の前提に含まれるとする一方で、「政府が(夏ごろと)決めたことなので、理解活動が進まなくても放出になるかもしれない」とも述べた。漁業者が反対を続ける中で放出する可能性についても「答えが難しい。何を持って放出開始をするか答えがない」と否定しなかった。広報室は、理解活動は広報活動のことだと説明している。
 高原氏は、22年5月に東電が報道陣に構内を公開した際は「社長以下、理解をもらえない中での放出はしないと言っている」と述べていた。【木許はるみ】
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