[2023_12_06_04]柏崎刈羽原発の運転禁止の命令解除 年内にも最終判断へ (NHK2023年12月6日)
 
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柏崎刈羽原発の運転禁止の命令解除 年内にも最終判断へ

 18時32分
 テロ対策上の問題が相次ぎ、事実上、運転を禁止する命令が出されている東京電力の柏崎刈羽原子力発電所について、原子力規制委員会は6日、改善が図られているとする検査結果の報告を受け、委員みずから現地調査や社長などとの面談を行い、命令を解除するかどうか最終的な判断をすることを決めました。早ければ年内にも判断が示される見通しです。
 柏崎刈羽原発ではおととし、テロ対策上の重大な問題が相次いで見つかり、原子力規制委員会が事実上、運転を禁止する命令を出しています。
 規制委員会は命令解除にあたって、改善状況を調べる検査を行うとともに、東京電力に原発を運転する「適格性」があるか、改めて確認することにしていて、6日の会合で事務局の原子力規制庁からそれぞれの結果について報告を受けました。
 このうち、検査の報告書案では、悪天候の際にも監視を行える体制が整備されていることや、問題点を共有する会議で実効的な議論が行われていること、それに、社長直轄の核物質防護モニタリング室が設置され、現場の行動観察などが行われていることなどを挙げ、「自律的に改善できる仕組みが定着しつつある」と結論づけています。
 また、「適格性」の再確認については、安全対策に必要な投資を行うことや、継続的にリスク低減に取り組むことなど、東京電力自身が示した基本姿勢に反する行動は確認されなかったとしています。
 いずれの報告内容についても委員から異論は出されず、今後、委員長や委員による現地調査や東京電力の社長などとの面談を行い、委員会として命令を解除するかどうか最終的な判断をすることを決めました。
 早ければ年内にも判断が示される見通しです。

 規制委 山中委員長「早ければ年内に最終的な判断も」

 柏崎刈羽原子力発電所について、改善が図られているとする検査結果などが報告されたことを受けて、原子力規制委員会の山中伸介委員長は「非常に長い時間をかけて丁寧に検査してもらったつもりだ。改めて追加の検査をしなければならない状況ではないという印象だ」と述べました。
 そのうえで、「現地調査や社長らとの面談を行ったうえで、命令解除について判断材料がそろえば、早ければ年内に最終的な判断もありえる」と述べました。

 一方で、検査を実施している間にも、
 ▽社員が有効期限が切れた入構証で原発の構内に入っていたり、
 ▽誤って違法薬物の検査で陽性反応を示した社員を立ち入らせたりする
 などの問題が相次いだことについては、「いずれも軽微な事案だと判断している。トラブルや不適切な事象は、どの発電所でも起こりうるので、東京電力が自主的に改善できているかが重要だ」と述べ、命令解除の判断には影響しないという考えを示しました。

 テロ対策上の重大な問題 調査・検査と改善の経緯

 柏崎刈羽原子力発電所で、
 ▽社員による中央制御室への不正入室や
 ▽外部からの侵入を検知する設備の不備など
 テロ対策上の重大な問題が相次いだことを受けて、原子力規制委員会はおととし、事実上、運転を禁止する命令を出すとともに、東京電力の再発防止の取り組みなどを確認する「追加検査」を始めました。

 【問題の背景】
 規制委員会は、今回の問題の背景には、
 ▽東京電力の経営層によるテロ対策業務への関与の不足や
 ▽警備などを担当する協力会社が、東京電力の社員に対してそんたくする構造などがあったと指摘し、
 東京電力の本社や、柏崎刈羽原発に立ち入り検査を行ったほか、東京電力や協力企業の社員らに聴き取り調査を行いました。
 また、社員らのふるまいや、やり取りをチェックする「行動観察」と呼ばれる手法も取り入れ、延べ4268時間に及ぶ検査を行ってきました。

 【中間報告】
 去年、規制庁がまとめた中間報告では、ほかの原発に比べて、
 ▽核物質防護設備の保守管理が不十分で
 ▽管理する立場の人間が、トラブル対応を議論する場に参加しておらず、現場への立ち会いも少なかったことなどが指摘されました。

 【検査報告書】
 ことし5月には、検査の報告書が出されましたが、多くの項目で改善が確認された一方で、
 ▽悪天候の際に監視を行うための、特別な体制が整備されていないことや
 ▽問題点を共有する会議での議論が低調なこと
 それに、
 ▽改善策を一過性のものにしない取り組みが不十分なことが指摘され、
 規制委員会は、命令を解除せず検査を継続することを決めました。

 【継続検査→報告書案】
 規制庁は、12月4日まで現地での訓練に立ち会うなど、検査を続け、12月6日に改めて出した報告書案では、東京電力が社長直轄の核物質防護モニタリング室を設置し、現場の行動観察を行っていることなどを確認したとして、5月に指摘された課題についても改善が図られたとしています。

 【改善の仕組み構築】
 そして、仮にテロ対策上の不備が発生した場合でも、これまでのように問題を放置することなく、事態が深刻化する前に東京電力みずからが自律的に改善できる仕組みが構築され定着しつつあると判断したと結論づけました。

 【追加検査の実施中にも問題相次ぐ】
 一方で、追加検査を実施している間にも、
 ▽去年5月、東京電力の社員が有効期限が切れた入構証で複数回、原発の構内に入っていたことが発覚したほか、
 ▽ことし6月には、重要施設への侵入を防ぐため監視用に設置された照明8台が電源に接続されず、点灯していない状態が半年以上にわたって続いていたことが明らかになりました。
 さらに、
 ▽ことし10月には、違法薬物の抜き打ち検査で、陽性反応を示した社員について、結果を見誤って入域を制限されている区域に立ち入りを認めるなど、
 問題が相次いでいます。
 これらの問題について、原子力規制庁は、いずれも軽微な問題だとしたうえで、東京電力が再発防止対策にのっとって、みずから改善する仕組みが整いつつある状況だとして、通常の検査の中で対応を確認するとしています。

 『東京電力の「適格性」』確認する異例の対応

 原子力規制委員会は、2017年に柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の再稼働の前提となる審査の中で、東京電力が福島第一原発事故を起こした当事者であることから、技術的な審査に加えて、原発を運転する資格があるかという「適格性」について確認する異例の対応が取られました。
 東京電力は、
 ▽原発の安全対策に必要な投資を行うことや、
 ▽継続的にリスク低減に取り組むこと、
 それに、
 ▽自主的に原発の安全性向上を実現することなど、
 7つの項目に取り組むことを約束し、規制委員会は、これを受けて東京電力に「適格性」があると判断しました。

 しかし、2021年になって、
 ▽東京電力の社員がIDカードを不正に使用して、柏崎刈羽原発の中央制御室に不正に侵入する問題が起きていたことや、
 ▽テロリストなど、外部からの侵入を検知する複数の設備が壊れたままになっていて、その後の対策も十分機能していなかったことも明らかになり、
 規制委員会は、東京電力に対し事実上、運転を禁止する命令を出しました。
 規制委員会は、東京電力の改善状況を調べるとともに、ことし7月には命令を解除するにあたって、東京電力に原発を運転する「適格性」があるか改めて確認する方針を決めました。

 一度は了承した7項目の基本姿勢について、改めて取り組み状況を確認することとし、規制庁は、およそ3か月かけて東京電力の内部資料やマニュアルを精査し、担当者への聴き取り調査などを行いました。
 その結果、
 ▽安全に絶対はないというメッセージを社長が発出したり
 ▽津波対策などで新たな重大なリスクが見つかった際に、速やかに経営層と情報共有し、対策を講じたりしていたとして、
 基本姿勢に反する行動は確認されなかったとしています。

 ただ、
 ▽一度は「適格性」を確認したあとに、テロ対策上の重大な問題が明らかになったことや、
 ▽IDカードの不正使用については、
 原子力規制庁が問題を把握していながら、発生からおよそ4か月間、規制委員会に報告しなかったことなど、規制側の対応にも課題が指摘されています。
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