[2023_10_24_03]50年前、原発の安全問う 双葉高生が当時の校内新聞で特集 創立100年の年、再び世に 福島県双葉町(福島民報2023年10月24日)
 
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50年前、原発の安全問う 双葉高生が当時の校内新聞で特集 創立100年の年、再び世に 福島県双葉町

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 半世紀前の1973(昭和48)年11月17日に発行された双葉高の校内新聞「双高(ふたこう)新聞」に、原発の安全性を問う特集記事が掲載されていた。東京電力福島第1原発事故で栃木県に避難している同窓生が、福島県双葉町の自宅で見つけた。すでに1号機が営業運転を始めていた中、原発設置についての地域の意向をアンケートで浮き彫りにし、当時の住民の思いが垣間見える。高校は創立100年を迎えた。携わった同窓生は「休校中の母校の節目に、当時の高校生が持っていた問題意識を知ってほしい」と呼びかけている。
 発行した年に東電福島第1原発の双葉町側敷地で6号機が着工した。こうした時代背景を受け、新聞部が特集を組んだとみられる。通常年3回ほど、1枚表裏の2ページを制作していたが、4ページ構成で組んだ。「原子力発電の安全性を問う」と題した特集は3面に掲載した。
 双葉町出身の官林祐治さん(66)=団体職員、川崎市在住=は当時1年生で、新聞部の顧問教諭や2年生のサポートを受けながら、原発に関する意識調査を集計した。
 地元の約200世帯にアンケートし、87%回収した。原発設置については賛成が28%、反対が62%、分からないが10%。原発は電力資源開発に必要かとの問いでは、思うが73%、思わないが15%、分からないが12%だった。「電力不足の深刻化、火力発電は公害問題を生ずる」と現在に通じる視点で分析した。「東京で使う電力を、どうしてここに安全性に不安のある原発を作らなければならぬのか」との意見も載せた。
 万一の事故に備え、原発の安全装置にも触れた。「安全装置が設備されているのは当たり前のことであり、問題はそれが実際に働くか?現在においては、いずれの場合も実証性が少ない」との識者の見解を記した。
 官林さんは「放課後、顧問の斉藤六郎先生の車で東電関係者や原発の専門家のもとに取材に行き、インタビューした。毎日遅くまで作業したことやいわき市の印刷会社に行き、校正したのを覚えている」と懐かしんだ。
 今夏、官林さんのもとに50年前の校内新聞が届いた。送り主は2年先輩の北村雅さん(68)=栃木県小山市在住=。6月下旬に東京で開かれた同窓会に、北村さんの同級生、江井博行さん(68)=栃木県那須烏山市在住=が双葉町の自宅で見つけた50周年記念の資料を持参した。その中に式典の次第と、セピア色に変色した新聞が入っていた。新聞部員として官林さんの名前が載っていたため、北村さんが新聞を送ってくれた。
 双葉高から筑波大第一学群社会学類に進学し、卒業後は日本新聞協会や日本新聞博物館に勤務した経験を持つ官林さんは「不思議な縁が重なり、母校の節目の年に新聞が世に出た。双葉高関係者だけでなく、多くの人に見てほしい」と願う。双葉高の「財産」として、県内の関係機関での保管を望んでいる。
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