[2023_10_13_02]「…多核種除去設備が60種類以上の放射性核種をほぼ完全に除去 できるかどうか重大なデータがないため依然として深刻な懸念…」 「全米海洋研究所協会」の汚染水海洋放出反対声明(2022.12.12) 10/4(水)第121回東電本店合同抗議でのアピール (下) (了) 佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委)(たんぽぽ2023年10月13日)
 
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「…多核種除去設備が60種類以上の放射性核種をほぼ完全に除去 できるかどうか重大なデータがないため依然として深刻な懸念…」 「全米海洋研究所協会」の汚染水海洋放出反対声明(2022.12.12) 10/4(水)第121回東電本店合同抗議でのアピール (下) (了) 佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委)

 『声明』は、次のように具体的に、日本政府と東電が、希釈して海へ放出するにあたって無視していること、ALPSが放射性核種を除去できていない、と鋭く問うている。

◎ 「この汚染水の放出計画は、海洋生態系の健全性、および海洋生体系に生命と生活を依存する人々にとって、国境を越えて懸念される問題である。

 私たち(※筆者注:全米海洋研究所協会NAML)は、各タンクの放射性核種含有量、放射性核種を除去するために使用される多核種除去設備(高度液体処理システム)(ALPS)に関する重要なデータ(critical data)がないこと、そして汚染された廃水の放出に際して『希釈が汚染に対する解決策 』という仮定について、懸念を有している。」とし、「希釈の根本的な根拠は、有機結合、生物濃縮という生物学的プロセスの現実と、局所的な海底堆積物への蓄積を無視している。
 蓄積された廃棄冷却水に含まれる放射性核種の多くは、半減期が数十年から数百年に及び、その悪影響はDNA損傷や細胞ストレスから、アサリ、カキ、カニ、ロブスター、エビ、魚など影響を受けた海洋生物を食べた人の発がんリスク上昇にまで及ぶとされている。
 さらに、多核種除去設備(ALPS)が、影響を受けた廃液に含まれる60種類以上の放射性核種(その一部は人を含む生物の特定の組織、腺、臓器、代謝経路に親和性を持つ)をほぼ完全に除去できるかどうかが、重大なデータ(critical data)がないため、依然として深刻な懸念として残っている。」

 この『声明』は極めて重要で、説得力があります。
 事実、全米海洋研究所協会の『反対声明』と同協会の科学者の働きかけがあって、先に紹介した、太平洋諸島フォーラムヘンリー・プナ事務総長の発言が生まれたのです。
 ※ケン・ベッセラー博士の紹介
 ケン・ベッセラー博士は、米国・ウッズホール海洋研究所の海洋環境放射能センターの責任者で、海洋に存在する天然及び人工放射性核種の研究を専門としている。
 この研究所は、汚染水の海洋投棄に反対声明を出した・全米海洋研究所協会を構成するひとつの研究所である。
 博士は、福島第一原発事故の直後4月に、原発から1kmのところまで近づいて海水などの放射能汚染について調査をした科学者で、チェルノブイリ原発事故の際にも、黒海の放射性物質の影響を調査・研究している。
 「福島第一原発事故でも事故直後の2011年4月、他の日本人研究者と連名で福島第一原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という論文をまとめた。
 この論文は、世界で最も権威のある科学雑誌『ネイチャー』への掲載も決まっていた。

 ところが、日本の気象庁がベッセラー氏の記述は風評を煽るとして削除を求めた経緯がある。
 つまり、ベッセラー氏は日本の役所が隠したい内容でも科学者の良心に従って、その危険性を説いてきた反骨の科学者と言える。」と、『週刊現代』(2013.10.16)は報じていました。
 ケン・ベッセラー博士は、昨年エジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)において、ヘンリー・プナ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長との会談を行ってもいるのです。
 このような全米海洋研究所協会およびケン・ベッセラー博士らの働きかけで、ヘンリー・プナ事務局長は、「放流で水の安全性を確認する立場から、放流以外の選択肢を検討する立場」へと変わった(COP27リリース)のです。

 (3)代替案をまともに検討しない、日本政府

◎ 代替案については日本の複数の市民団体が政府に対し、再検討を迫った経緯がある。
 しかし、都内のある団体代表は、「当時、経済産業省には『何を言われても路線は見直せない』という雰囲気が強かった」、と語っています。
 最も簡単で経済的な方法は「安全な地上保管」である、と私も思います。
 代替案を検討しないのは、トリチウムを放出している、原発・核兵器所有国の意向でもある、と思います。

◎ トリチウムの海洋放出は、人間に多くの影響があることは世界から報告されているのです。
 カナダからは、カップリング原発の下流域で新生児の死亡率の増加、小児白血病の増加が報告されているのです。
 日本でも同様なことが起きている。玄海原発の隣町の唐津市で白血病の増加が、泊原発の泊町、隣町の岩内町でもガンの発生が原発稼働後に道内でそれぞれ、一位と二位になった、と報告されています。
 再処理工場はさらに深刻です。大量のトリチウムが放出、排出されているからだ。イギリス、フランスの再処理工場周辺での白血病を含む健康被害が多いことが指摘されている。
 日本政府と東電のトリチウム水海洋放出を止め、変更することは、結果的に、世界の放射能被曝による健康被害を認めることになるからです。

◎ 六ケ所再処理工場が稼働を始め、1年間で800トンの使用済み核燃料を処理すると、トリチウムの全量が再処理の過程で環境中に放出する。それは年間18ペタベクトルである。(福島第一原発で溶け落ちた核燃料は約200トン。それに含まれるトリチウムは、約3.4ペタベクレルである。)
 日本政府も原子力規制員会も電気事業者も、絶対に福島第一原発のトリチウム水=汚染水の放出を止めるわけにいかない根拠がここにある! 放射能汚染水を1500ベクレル/Lまで薄め、年間22兆ベクレルの海洋投棄をやめたら、再処理工場は成り立たなくなるからです。
 つまり、原発を推進し、核兵器を開発する技術の開発という根幹の問題なのです。
 しかし、そんなことは理由にならない。太平洋は、ごみ捨て場ではない。
 世界の漁獲量の70%を有する太平洋、この太平洋の貴重な海洋資源に依存し、経済・文化、風土を創り上げてきた島嶼諸国の人々とその社会、そして海洋生物の安全を破壊することは、絶対に許されるものではない。
 ましてや、島嶼諸国の人々は、ビキニ環礁、タヒチ諸島での相次ぐ原水爆実験による被曝を経験しているのである。
 彼らとともに、日本政府と東電による放射性汚染水の海洋投棄を許さ
ず、闘ってゆきましょう!
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_:GENKAI_:ROKKA_:TOMARI_: