[2023_09_26_03]ヒラメ体内の有機結合型トリチウム 海水濃度超え蓄積せず 環境科学技術研(六ヶ所)が実験(東奥日報2023年9月26日)
 
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ヒラメ体内の有機結合型トリチウム 海水濃度超え蓄積せず 環境科学技術研(六ヶ所)が実験

 原発や再処理工場から海洋放出される放射性物質トリチウム。タンパク質などの有機物に結合した場合でも、ヒラメの体内に海水の濃度を超えて蓄積しない」とする公益財団法人・環境科学技術研究所(六ヶ所村)の実験結果が、国際学術誌に掲載された。25日、同研究所が発表した。周りの海水のトリチウム濃度が下がれば、分解されて排出され、体内に残り続けないとしている。
 通常より排出に時間がかかる「有機結合型トリチウム」の蓄積に関する実験データは、海産魚ではこれまでなかったという。
 論文ではデータを使い、ヒラメの筋肉中の有機結合型トリチウム分解速度を求めるモデルを作成した。
 東京電力福島第1原発から放出される多核種除去設備(ALPS)処理水のトリチウム濃度(1リットル当たり1500ベクレル未満)にさらされた場合は餌の濃度が天然レベルなら、ヒラメの筋肉中の有機結合型トリチウム濃度は1キロ当たり100ベクレル以上にならないと推定した。1日当たり190グラム、1年間食べた場合、一般人の年間被ばく限度(1ミリシーベルト未満)を大きく下回る。
 実験の論文は「サイエンス・オブ・ザ1トータル・エンバイロメント」に掲載された。執筆した谷享副主任研究員は「データを示すことで、海産物にトリチウムが入った場合にどうなるか、国際的な理解の醸成につながれば」と話した。
 実験では、トリチウムと同じく水素の仲間で、ほぼ同等のデータを得られる重水素を加えた海水を使ってヒラメを飼育した。ヒラメ筋肉中の有機結合型重水素濃度は、実験に使った海水の20%の濃度となる約400ppmで、上昇がほぼ止まった。その後天然海水にヒラメを戻すと、約200日間で実験前と同程度の濃度に戻った。
 実験結果から、有機結合型トリチウムにおける、排出しやすさの目安となる「生物学的半減期」は133日とした。
          (新村菜穂)
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