[2023_09_14_05]地震も豪雨ももう嫌だ ふくしま作業員日誌 53歳男性(東京新聞2023年9月14日)
 
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地震も豪雨ももう嫌だ ふくしま作業員日誌 53歳男性

 12時00分
 先週末、台風13号の影響で豪雨が降った夜は、大雨警報で携帯電話が鳴りっぱなしだった。
 今年は残暑も厳しくて、イチエフ(福島第一原発)はまだサマータイム中で朝が早いので、夜8時過ぎに寝たけれど、雨の音がものすごくて夜11時ごろに起きてしまった。
 2階の寝室の窓から外を見たが、部屋の電気が窓に反射して見えなかった。1階に降りて玄関の戸を開けると、バケツをひっくり返したような雨が家の中に吹き込んできて、慌てて戸を閉めた。
 家の前の道路も15cmぐらい冠水していた。4年前の台風19号のときに車が水没しかけたのを思い出し、昼のうちに車を高台に移しておいてよかった。
 福島県内で浸水被害がひどかった、いわき市の友達に「大丈夫か」とメールを送ると、「大丈夫だよ」と返事が来て安心した。
 川の氾濫で、水が一気に1.5mまで上がった地域もあったという。60代の男性が側溝近くで亡くなっていたというが、 男性の家族を思うと胸が痛む。
 翌朝は晴れていて「今日も暑くなるなー」と同僚とぼやきながら、イチエフに行った。大雨の影響はそれほどなかった。蒸し暑い中、かっぱを着て全身汗まみれで作業をしていたら、急にザーッと強い雨が降ってきて、みんなずぶぬれに。靴の中はたまった水でちゃぽちゃぽ音がするし、雨なんだか汗なんだかわからない状態で、下着までびしょびしょになった。
 それにしても今はタンクが溶接型に変わり、タンクの周りの堰(せき)の高さも上がって、堰の上にもテントのような屋根がかけられたから、堰から水が漏えいすることはなくなった。
 溶接をしていないフランジ型タンクだったときは、タンクからの漏えいもあったし、堰の高さも30cmぐらいしかなく、雨が降るとあっという間にあふれていた。その心配がないだけで大きい。
 でも、地震も豪雨ももう嫌だ。(聞き手・片山夏子)
 (9月14日「東京新聞」朝刊21面より)
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