[2023_09_07_06]福島の原発処理水放出 「すぐ中止 取るべき策ある…頑丈な遮水壁設置、東電責任で長期保管を」 今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)(たんぽぽ2023年9月7日)
 
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福島の原発処理水放出 「すぐ中止 取るべき策ある…頑丈な遮水壁設置、東電責任で長期保管を」 今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)

 ◎ 岸田文雄首相は、東京電力福島第一原発にたまり続ける放射性廃水、いわゆる「多核種除去設備(ALPS)処理水」を海に放出することを決め、東電は8月24日、実際の作業を始めた。そのままでは法令に基づく放出基準濃度を超えているので海水で希釈して放出した。
 「廃炉と復興を進めるため」だそうだが、薄めても放射性物質がなくなるわけではない。漁業者をはじめとする多くの団体や地方議会の反対は無視された。
 2015年、度重なる汚染水漏れを心配して提出された福島県漁業協同組合連合会の要望書に対して政府・東電は、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないと文書で回答している。(中略)

 ◎ 海洋放出の話が出た当初から私は「第一原発からこれ以上余計な放射性物質を環境に放出すべきではない。放射性廃水は大きなタンクで貯留するか固化するかして、東電の責任で長期保管すべきだ」と言ってきた。
 これ以上タンクを設置する場所がないというのであれば、約10キロ離れた場所に廃炉が決まった福島第二原発がある。
 ALPSで除去できないトリチウムの半減期は12年なので、その10倍の120年たてば放射能の強さは1000分の1に減衰し、もう120年たてば100万分の1になって自然界レベルと同じになる。(中略)

 ◎ 福島第一事故で1〜3号機の3つの原子炉がメルトダウンを起こし、溶融燃料で原子炉容器の底が抜け、燃料デブリが格納容器の底に堆積した。原発事故が厄介なのは、デブリが発熱を続けていることだ。この熱を冷却するため、今でも各原子炉で大量の注水が続けられている。
 デブリに触れて汚染された水は、壊れた格納容器から建屋の地下に流れ込み、外から入ってきた地下水と合流して汚染水となる。汚染水はポンプでくみ上げて地上タンクに保管されてきた。(中略)

 ◎ 政府・東電がやるべきは、まずは海洋放出を中止して関係者の意見を聞き、同時に地下水の流入を防ぐ頑丈な遮水壁を、壊れた原子炉の周りに設置して根本的な流入防止対策を進めることだ。
 (9月7日「東京新聞」夕刊3面より抜粋)
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