[2022_02_24_01]原子力「核のごみ」処分 将来へ配慮必要 国が自治体向け説明会(茨城新聞2022年2月24日)
 
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原子力「核のごみ」処分 将来へ配慮必要 国が自治体向け説明会

 原発から出る高レベル放射性廃棄物処分を巡る国の自治体向け説明会が今月、開かれた。「核のごみ」は放射能が十分に減るまで10万年という途方もない間、人間社会から隔離しなくてはならない。茨城県内でも日本原子力発電(原電)東海第2原発(東海村)に使用済み核燃料が保管され、日本原子力研究開発機構(原子力機構)東海再処理施設(同)は高レベル放射性廃棄物を抱える。最終処分の場所や手法について、識者は「将来世代の権利を考えて」と訴える。
 最終処分場の選定は、順に「文献調査」からボーリング調査による「概要調査」、地下施設での試験による「精密調査」まで計20年程度かかる。国は複数から候補地を募り、最終的に1カ所に絞る方針だ。2020年11月に北海道の寿都町と神恵内村で全国初の文献調査が始まった。
 国は17年、火山や断層などを考慮して処分場の適否を4色で塗り分けた地図「科学的特性マップ」を公表した。適地は国土の7割弱に上り、県内もほとんどの地域が該当した。
 こうした現状を踏まえ、国と原子力発電環境整備機構(NUMO)は全国で対話活動を続けている。一環として自治体向けの説明会も実施し、本年度は2月にオンライン形式で実施した。
 資源エネルギー庁の担当者は「地層処分に理解を深めてもらいたい。核のごみは日本全体で解決しなければ」と語る。
 NUMOによると、国内には21年3月現在、使用済み核燃料が約1万9千トンあり、ガラス固化体換算で約2万6千本相当に上る。既にガラス固化体に加工した2492本を、青森県六ケ所村にある日本原燃の施設と東海再処理施設で貯蔵する。原子力機構によると、東海村には329本ある。県内では東海第2原発に使用済み核燃料約370トンが保管中だ。
 「核のごみ」をどうすべきかについて、日本弁護士連合会のシンポジウムが今月、都内で開かれ、「将来世代の権利と利益」をキーワードに弁護士や識者が議論した。
 高知工科大フューチャー・デザイン研究所の西條辰義所長は「未来人」になりきって社会の仕組みを考える手法「フューチャー・デザイン」を提唱。人間は短期的思考が強く、将来を見る目がなかったと指摘し、「将来世代を豊かにするなら、血縁関係のない将来世代までを考えた意思決定が必要」と述べた。
 宇都宮共和大の吉良貴之専任講師(法哲学)は「将来世代には良好な環境で生きる権利がある。現在世代は将来世代に配慮する義務がある」と強調した。
 六ケ所村施設の事業許可取り消し訴訟の原告弁護団、池田直樹弁護士(大阪弁護士会)は「今の意思決定に将来の配慮を組み込まなくてはいけない」と主張する。その上で「将来世代への配慮が欠けていれば、事業を差し止めできるような法的根拠が必要だ。現在の環境アセスをもっと厳格化すべき」と、実効性ある法整備を求めた。
 ★高レベル放射性廃棄物原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムなどを取り出して再利用する過程で発生した廃液など。ガラスと混ぜ、円柱形のステンレス容器(高さ約130センチ、直径約45センチ)で冷やしたガラス固化体を金属製容器と特殊粘土で覆い、処分する。国は地下300メートルより深い岩盤に埋めて数万年以上、隔離する方針を定めている。放射能が安全なレベルに減るまで10万年かかるとされる。
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