[2022_02_11_07]社説:復興庁発足10年 教訓生かし組織替えも(京都新聞2022年2月11日)
 
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社説:復興庁発足10年 教訓生かし組織替えも

 東日本大震災を受けて復興庁が発足してから10年を迎えた。
 地震・津波被災地でのインフラ整備は一区切りついた一方、東京電力福島第1原発事故などからの生活復興は道半ばだ。震災復興の「司令塔」としての歩みを振り返り、インフラ整備や被災者支援、復興財源の在り方などを今後に生かす検証が欠かせない。
 復興庁は、震災から1年近くたった2012年2月に時限的に設置され、中央省庁と被災自治体を調整しながら復興事業を進めてきた。岩手、宮城、福島の3県に復興局を置き、32兆円に上る復興予算を投じて、道路や堤防、宅地造成といったハード面に加え、被災者の心のケアなども含め被災地の再生を図ってきた。
 当初の設置期限は、20年度末までだったが、原発事故からの復旧・復興の遅れもあって、10年間延長された。
 確かにインフラ復旧の進捗(しんちょく)は著しい。例えば昨年末、復興道路として整備を進めた三陸沿岸道路が全線開通し、計約570キロの道路網が完成した。大規模な土地のかさ上げや高台整備なども進んだが、いまだに利用されない空き地が目立つ。被災地の要望を十分精査せず、事業が過剰になりがちだったのではないか。
 一方で復興事業が長期にわたる中、被災地では人口流出が加速した。引き続き生活支援、医療や心身のケア、コミュニティーの再生といった支援が欠かせない。
 とりわけ福島県では原発事故に伴う避難指示が続く区域が残り、多くの住民が避難を強いられている。廃炉に30〜40年を要し、汚染水対策や住民の帰還に向けた環境整備、除染土の処理といった解決すべき課題は多い。住民に寄り添った復興庁の主体的、積極的な取り組みを期待したい。
 インフラ復旧がほぼ完了し、予算規模が小さくなる中、復興庁の在り方も問われよう。全国知事会が提唱する「防災省」創設など、平時の防災から災害時の対応、復旧・復興までを一元的に担う常設組織の設置を求める声は根強い。
 だが権限移行を伴う組織改編を望まない省庁の反発が強く、議論は進まない。南海トラフ巨大地震や日本海溝・千島海溝巨大地震など、未曽有の災害も想定される。災害大国としてのビジョンや危機感が欠けていまいか。
 復興庁が蓄積したノウハウや教訓を生かし、大災害時に迅速で実効性のある対応が可能な組織への衣替えを議論すべきであろう。
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